TechTech~テクテク~No.26
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3GHz300MHz30MHz3MHz300kHz30kHz1100kkm1kkmm10000m1100m11m10000mm周波数波長極超短波超短波短波中波長波極超短波超短波短波中波長波伝送できる情報量利用技術の難易度易しい小さい気象レーダーTV放送(地デジ)携帯電話警察無線消防無線航空管制通信FMラジオAMラジオ船舶通信アマチュア無線漁業無線船舶・航空機用位置表示(フライトレーダー等)ミリ波受信に力を発揮する高効率アンテナ 私たちの生活に欠かせない、テレビやラジオ、電話、インターネット……。これらのデータを伝える方法には、「無線」と「有線」の2通りがある。このうちテレビやラジオといった放送、また携帯電話などに使われているのが、空を飛ぶ電波を使う無線通信だ。 電波には波長が長い長波から、短い極超短波、ミリ波まで、幅広い範囲の周波数がある。そして波としての物理的性質を生かした形で、用途ごとに使用する周波数帯が、条約や法律として定められている。例えば、中波はAMラジオ放送、極超短波は携帯電話、マイクロ波は衛星通信といった具合だ。 これまで電波の利用は、主に低い周波数から進められてきた。周波数の低い電波には、障害物の陰まで届き遮断されにくいという利点があるのだ。実は、伝送情報量は高い周波数の電波ほど大きくなるのだが、効率的に送受信することが技術的に難しく、実用化が遅れていた。 しかし近年、高画質化などによる情報伝送量の増加に応えるため、周波数の高い電波の活用が進められている。なかでも注目されているのが、「未開発の電波資源」と呼ばれるミリ波だ。理工学研究科電気電子工学専攻の安藤・廣川研究室では、高周波数の電波を効率良く送受信できるアンテナを開発。ミリ波の活用に道を開いた。 「アンテナの設計原理は、基本的にどの周波数のものでも変わりません。ただ、ミリ波など周波数が高い電波ほど伝送時に熱に変わりやすく、エネルギーのロスが発生しやすい。そこでいかにこの損失を抑え、送受信の効率を上げていくかがミリ波の活用のになります」 同研究室の安藤真教授は、アンテナ開発のポイントをこう語ってくれた。研究対象は、電磁界理論、アンテナ工学、そして無線通信。研究室で開発された軽量で効率の高いアンテナは、金星や小惑星の探査機「あかつき」や「はやぶさ2」に搭載されるなど、地球の外でも活躍している。 電波帯域の不足で、注目を集めるミリ波携帯電話のアンテナは、様々な方向にある基地局と電波をやりとりする全方位型のもの。光を全方向に発する豆電球のような小型のイメージで、世界で進められているアンテナ研究は多くがこのタイプのものだ。一方、鋭い電波を狭い方向に送る、レーザーポインタのようなアンテナもある。衛星放送などから電波の受発信を行うアンテナなどは、距離が遠い分、方向が広いとエネルギーが拡散するので、こちらの大型タイプが使われる。アンテナの2つのタイプ「電球とレーザーポインタ」  実はアンテナには送信用と受信用の設計原理が同じという性質がある。データとしての電気信号を電波に変えて送り、受け取った電波を電気信号に戻すことによって、無線通信を行っている。送受信される電波の拡がりは用途ごとに要求が異なり(下図)、安藤教授が研究する「導波管アンテナ」は、電波を狭い角度範囲に鋭く送受信するものだ。 「導波管アンテナは中空構造で、誘電体を使わないため、エネルギー損失が非常に小さくなっています。ただ通常は複雑な立体構造をしており、大きく、重くて高価とされていました。そのためこれまで軍用のレーダーなど限られた用途にしか使われてきませんでした」 研究室では、新しい動作原理や導波管構造を取り入れ、併せて効率的な設計法を開発することでアンテナを徹底的に簡素化し、民生利用を可能にした。導波管アンテナには、内部の空間を側壁で狭くA:衛星放送用の高効率ラジアルラインスロットアンテナ。/B:分野ごとにアンテナ開発の材料がまとめられている。/C:アンテナの効率や電波の放射方向を測定する電波暗室。/D:電波の反射や透過などアンテナや部品の診断に利用する専用の測定機器。/E:導波管スロットアンテナ。車など移動体上で衛星放送を受信するために実用化もされている。DE2014 Autumn3

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