TechTech~テクテク~No.27
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左:幼い頃に父親がくれた本が、エネルギーの世界に興味を持つきっかけになった。マンガやイラストでわかりやすく原子力用語が解説されている。/中:4歳から始めて現在も続けているピアノ。高校時代は受験勉強と並行してショパンの大作「英雄ポロネーズ」に打ち込んだ。/右:商談の場に欠かせない名刺入れは奥様からのプレゼント。 エネルギーとの関係も深い化学工学。学ぶうちに社会インフラの最上流を支える仕事に携わりたいと考えるようになっていました。特に関心があったのが、当時日本の電力のベースを担っていた原子力発電。その希望が叶い、入社した東芝では設計者として福島第一原子力発電所に駐在し、放射性廃棄物処理プロセスを、より安全により効率的に処理する改善計画を進めていました。 そんな矢先に東日本大震災が発生。放射能を帯びた汚染水の回収や、汚染水から放射性物資を除去する多核種除去設備(MRRS)の設計に従事することになったのです。私は現場に駐在し、必要とあれば防護服を着て調査や分析を行いました。精神的にも肉体的にも過酷な環境でしたが、震災前からお世話になっていた福島県富岡町の被災を目の当たりにしていたので、この仕事をやり遂げなければ、いや絶対にやり遂げる! という一心でした。 設計部と調達部との兼務が命じられたのは、MRRSの稼働を控えた時期。東芝がヨーロッパで初めて計画する原子力発電所プロジェクトに加わるというものでした。前例のない土地で新規パートナーを開拓し、折衝していく必要があり、設備設計を熟知した立場から資材調達を行うよう辞令が出たのです。もともと経営マネジメントや金銭の収支に直接関係する仕入れ業務に興味がありましたし、国内外のプロジェクトに携わりたいという思いもあり挑戦しました。 現在は国際調達を担うバイヤーとして、自ら設計したMRRSに再び携わっています。ものとお金の流れを把握できる立場で、設計者だったときには部分的にしかかかわれていなかったプロジェクトの全体にかかわれることが喜びです。 設計、調達と異なる部門を経験してきましたが、東工大で学んだことは何ひとつ無駄になっていません。化学の専門知識はもちろん、異分野の専門家との協業、そして海外の研究環境をイメージできることや自分の考えを主張する術など、多様な人とやりとりする力を培うことができました。よく誤解されがちですが、コミュニケーション力が高いというのは、口が達者であることではありません。相手の要求を察し、的確に応える能力こそ、本当の意味でのコミュニケーション力なのではないでしょうか。 ゆくゆくは「東芝に鈴木翔あり」と言われるような人材になりたいですね。自ら意思決定する立場でプロジェクトを指揮して、世界を舞台に活躍するのが夢。様々な国や機関と東芝をつなぐハブとなって、新たなエネルギーのあり方を発信していきたいと考えています。国や機関、企業をつなぐハブのような存在に「東芝に鈴木翔あり」と呼ばれる人材になって世界を舞台に活躍したいすずき・しょう鈴木 翔株式会社東芝 電力システム社 原子力事業部 原子力調達部東京都出身2002年 東京工業大学第3類入学2005年 飛び級で同大学院理工学研究科化学工学専攻に入学2006年 同博士課程に進学2007年 米・ミネソタ大学へ留学2009年 博士課程を修了 株式会社東芝 電力システム社入社設計し、調達する化学エンジニアchapter 3 :あり」ってい2015 Spring11

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