日本にはトンネルが、公に記録された道路用だけでも約1万本あります。地元の山を人力で掘り進めたものから、都市部の地下や海底を最新の技術を用い掘削したものまで工法はさまざまであり、利用方法も多種多様です。 私の研究は、トンネル工事の安全と利用時の安心を支えることが目的。具体的には、新たに掘る地盤の質や強度を調査し、崩落などによる労働災害を防ぐ方法を提案したり、開通後のトンネルを適正に維持管理するための手法を確立し、より快適で、かつ合理的にトンネルが利用できるようにする対応策を考案する研究です。 地下を掘るトンネル工事は、実際に工事の対象となる山などがそうであるように、すべての現場の状態を完全に把握したうえで進めることには限界があります。もちろん現在の調査技術をすれば、掘る山の地質をくまなく調べ上げることは可能かもしれません。しかし非常に多くの費用と時間を投入する必要がある一方、また一日も早い開通を待ち望む人もいるため、限られた資源を最大限に生かす選択が求められます。大学の研究では、普遍的な原理の把握と同時に、社会への実装を見据えつつ、徹底的に精度を追究し、そこで得たデータや知見を有用な形で世界に還元する使命を持つと考えます。地下で進むトンネル工事の安全と開通後、利用する人の安心を支える社会への実装を見据えつつ原理・精度を徹底追究する研究CASE 5#インフラ整備#安全追求#生活利便の向上特集1研究・プロジェクト紹介都市環境学部 砂金 伸治 教授TMU #RESEARCH&ACTIONトンネルの安心・安全を支える技術の複合研究室紹介都市基盤環境学科トンネル・地下空間研究室トンネルの研究は、インフラとして利用される現実のことを前提とします。学生も自らの模型実験等の実施に加え、設備を有する国の研究機関や工事現場に足を運び、技術者から話を聞くなどして、土木に関する理論と現実を相互に理解できるようにしています。土木に関する理論と工事の実際を理解しインフラ整備の使命を体感する掘削工法の開発・適用工事の安全を支える支保構造の耐力評価換気・照明・非常用施設など付属施設の設計・運用地盤・岩盤の調査安定性の評価が、同研究室の研究対象開通後の安全を守るトンネルの維持管理010Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2020
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