がんの確定診断は現在、各診療科の医師が体内から切り出した疑わしき組織を、病理医が染色してプレパラートを作成し、顕微鏡で覗いて判断します。一連の過程を経る検査は相応の時間を要し、また部位によっては開腹手術を避けられません。医療現場のこうした現状に対し、私の研究室が開発を進める超音波顕微鏡のシステムは、体外に組織を取り出すことなく、しかもリアルタイムにがんの確定診断ができる能力を目指しています。 当研究室は本来、超音波を使った信号処理と解析を専門とします。しかし診断の高精度化を求めて超音波発信器を含めたセンサの開発にも取り組んでおり、学内の機械システム工学系の研究室や他大学と連携し、診断支援システムとして構築する計画です。 超音波と並ぶ当研究室のもう一本の柱が、撮影した平面の画像から3D情報を抽出するコンピュータビジョンの研究です。この技術は、医療分野への応用として、救急搬送中に撮影した画像から治療の優先度を測るトリアージを支援することや、スポーツ分野においては、選手の動きから試合を優勢に運ぶ戦術の選択や、指導に必要な情報を提供することへの応用が期待されています。超音波の信号や画像を処理・解析し新たな価値と機能を創出する医療やスポーツ指導の現場が抱える課題を技術で解決するシステム構築CASE 6#信号処理#医療支援#画像処理#スポーツ・アナリティクス「音」や「光」の検知から応用までを一気通貫するシステム構築研究室紹介田川研究室学生は、超音波の信号処理かコンピュータビジョンの画像処理のいずれかの分野で自身のテーマを追究します。研究室の主目的としては医療やスポーツ分野での実用を目指す画像処理技術を用い、ゲーム開発を考える学生もいます。基礎から学ぶ信号・画像処理技術の応用分野は学生のアイデア次第応用分野のニーズに基づくシステム構築高感度センサの開発処理技術・解析技術の開発応用分野のニーズ医療スポーツセンシング処理解析想定する応用分野対象に向けて超音波を発信し返ってきた信号をセンシング人の肉眼と同じ3D認識(両眼立体視)できる画像に変換撮影(光をセンシング)応用分野に必要なデータを読み解く音光信号処理画像処理システムデザイン学部 田川 憲男 教授011特集1/研究・プロジェクト紹介
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