看護の現場では、看護技術の基本は共有しつつも、年齢や性別、看護への反応などは患者さんごとに異なるため、熟練看護師が持つ豊かな経験や感覚を重視する傾向にあります。しかし多くの患者さんが心地よいと感じる看護技術には何か理由があるはずです。その科学的な根拠を明らかにし、誰もが扱える看護技術として確立することを目指しています。着目しているのは温度の活用。脳腫瘍や脳出血、認知症の患者さんは意識が不明瞭になり、その人らしさを失うことや、してほしいことを言葉で伝えられなくなることがあります。脳神経外科に勤務していた看護師時代、そうした患者さんに温めたタオルなどを当てると意識が覚醒し、生活のリズムを取り戻すきっかけとなりました。この経験に基づき、本研究では温かい刺激などの温度の刺激が自律神経の活動や脳の血流に与える効果を生理学的に検証しています。 看護師の仕事は、病気を治すことだけではありません。病気を患っていても、より良く生きるためのサポートをすることも看護師にとって重要な仕事です。専用の医療機器がない環境であっても、患者さんのために効果的に使える看護技術を確立し、経験年数の浅い看護師はもちろん、在宅で介護を担当する家族でも活用できるようにすることが私の研究の目的です。温度の刺激により意識を覚醒させより良い生活を実現するための看護技術の開発専用の医療機器や看護経験がなくても患者さんをサポートできるようにCASE 7#高齢化社会#基礎看護研究の構図と期待ベテラン看護師が持つ豊かな経験に基づいた看護技術を科学的に裏づけ、誰でも手軽に活用できる技術として確立。汎用性を高めることで、経験の浅い看護師はもちろん、介護施設や家庭でも実践できるよう普及を図る。臨床での患者さんの反応計測による生理的な効果の測定個人で異なる温度感覚の差先輩看護師からの指導・情報提供経験に基づく看護技術誰もが手軽に活用できる看護技術経験の浅い看護師高齢者施設、介護福祉施設での看護家族による介護科学的な検証医療機関非医療機関特集1研究・プロジェクト紹介健康福祉学部 前田 耕助 助教TMU #RESEARCH&ACTION012Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2020
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