東京都立大学(現首都大学東京) 大学案内2020
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 漫画編集者として3タイプの作家と仕事をしています。一つ目は本誌『LaLa』に連載作品を描く方で、すでにファンと呼べる読者がいて、ひとり立ちしているといっていい漫画家です。その中には若い方もいれば、私が中学生時代、読者だった頃から描き続けているベテランもいます。二つ目は、今は読み切り作品を描きつつ、連載を持つことを期して奮闘している新人。そして三つ目は本誌が公募する賞への応募や編集部への投稿をしてきた、漫画家志望の方。つまり素人ですが、作品からうかがえる才能や視点のユニークさなどに着目し、デビューまで私たち編集者が伴走します。 作家と編集者のペアの形に定型はありません。ストーリー構成やキャラクターづくりにまで踏み込む場合もあれば、“一人目の読者”として感想は述べるものの、作品制作に関しては資料集めなどのフォローをするにとどめる場合も。漫画家にはつくり手としてのこだわりがあり、編集者には作品が評判を集め作家として売れてほしいという思いがあります。より良い作品にしたいという願いは変わらないのですが、立場や考え方の違いにより衝突することもしばしばです。その際は、話し合うよりほか、打開策はありません。双方の意見を合わせて割ったような中途半端な折衷案は得てしてつまらない結果を生むもの。それを避けるためには徹底的に話し合い、作家の意を汲んだ上で落としどころを探り、より良い仕上がりのかたちに着地できるよう心掛けています。 『LaLa』の中心読者が10代半ばから後半の女性であることは、昔から変わりません。しかし最近の読者はSNSの無料で読める作品やネットでの評判、書店での試し読みから、まず単行本を購入し、気に入ったらその作品や作家が掲載されている漫画誌に手を伸ばす、という段階を踏みます。そうした読者の心をつなぎ止め、雑誌の売り上げを左右するのが付録です。私を含め編集部の若手3人が知恵を絞り、毎号の付録も企画・制作しています。必ず売れるという秘策も、人気作家を育てる特効薬もないので、持てる知恵を総動員し、面白いと思えることは何でもやってみていますし、『LaLa』の編集部もそうした方針なのです。 振り返れば首都大での学生時代も近い発想で、他学科のゼミに参加したり、寮でのセミナーを企画したりしていました。周囲の学生も、面白そうならやってみればいいじゃん、と背中を押してくれ、キャンパスにもそれを受け入れる自由な空気が満ちていました。興味が湧いたら、まずは動いてみるという私の行動原理は、もともとの性格もありますが、首都大の環境で4年間を過ごし、確固たるものになったのだと思います。子どもの頃から、歴史と漫画のファン。首都大では歴史考古学を学び、学芸員の資格も取得。卒業後は出版社の営業を経て、現在は少女漫画雑誌を編集する。将来の夢は「ジャンルは問わず、今はない新しい何かをつくる」こと。Prole中村 友美 さん旧 都市教養学部 都市教養学科人文社会系 歴史学・考古学分野(現 人文社会学部 人文学科)2013年3月 卒業株式会社 白泉社/LaLa編集部面白そうなら何でもやってみる─それを受け入れてくれた首都大という環境、そして、その発想力と行動力を総動員し読者の欲に応える。首都Report01015特集1/卒業生インタビュー

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