私は、理学部生命科学科の神経分子機能研究室に所属し、脳の老化について研究しています。大学院への進学は、学部4年次に決めました。所属研究室の主な研究テーマは、アルツハイマー病の発症機序を細胞や分子のレベルで明らかにすることです。研究室に配属されてすぐは就職も考えましたが、卒業研究で取り組んだテーマの興味深さと社会的な意義に惹かれ、最終的には大学院へ進み、研究者の道を歩む決断をしました。現在も卒業研究で着手したテーマに取り組み、博士の学位取得を目指しています。 加齢によって学習・記憶など脳の高次機能は低下し、アルツハイマー病などの発症リスクも増大します。しかし、この誰もが避けて通れない加齢による脳の老化の分子メカニズムは、未だによくわかっていません。例えば、なぜ歳をとると物忘れが多くなるのか? 私は、加齢によって脳内で変化する物質を特定することで、こうした老化のプロセスを調べています。 脳の機能は複雑を極め、老化の原因も多面的なので、老化研究にはさまざまな知見や手法を用いる必要があります。その点において、1~3年次に生命科学に関わる幅広い分野の基礎を学べたことが、現在の研究の基盤になっていることは間違いありません。実際、所属研究室や私の専門と異なる分野の情報が必要な時は、それを専門とする先生を訪ね、指導していただいています。そうした専門分野を超えたコラボレーションや研究者間の交流ができる風通しの良い環境も、私の研究にとって欠かせません。 日本だけでなく高齢化が進む世界の多くの国々にとって、健康寿命の延伸が喫緊の課題です。また、これまでにアメリカやスペインなど4度の海外学会で行った私の研究発表に対する他の研究者の反応や、最新の科学雑誌に掲載された論文からも、脳の老化現象への関心が高まっていることがうかがえます。 現在はまだ、独立した研究者になる途上の私ですが、世界最先端の研究を担っていると自負しています。現在の研究から、脳の老化予防に効果的な方法や、認知症などの脳疾患の治療法を開発できるのではないかと期待しています。脳の老化のメカニズムを明らかにすることで、多くの人が健康を保ち年齢を重ねる、豊かな人生の実現に貢献したいと考えています。「神経分子機能研究室」に所属。高校時代から生物に興味があり、生命科学を幅広く学べる首都大へ。4年次に研究室に配属され、最先端に触れつつ自身の関心に基づくテーマを追究する科学の世界に魅せられ、研究者への道を選択する。Prole岡 未来子 さん首都大学東京 大学院/理学研究科 生命科学専攻 博士後期課程1年特集1卒業生インタビュー物忘れや思考力の衰えなど誰もが避けて通れない加齢に伴う脳の老化について原因となる脳内物質の特定と機能低下の過程解明に挑む。誰の老原旧 都市教養学部 都市教養学科理工学系 生命科学コース(現 理学部 生命科学科)2016年3月 卒業TMU #RESEARCH&ACTIONReport04018Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2020
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