大きなものは大型バスくらい、重量が10tを超える規模から、小型では数百kgまで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)はロケットに乗せてさまざまなサイズの宇宙機を打ち上げます。機能も多種多様であり、通信や放送用、気象や環境変動の観測用、GPS用などの人工衛星は一定の軌道上をまわり、補給機は国際宇宙ステーションに物資を運びます。これらの宇宙機はすでに宇宙空間で運用されており、JAXAが常に地上から管制しています。 一方、私たちの部署で日々考えるのは、これから打ち上げる宇宙機です。宇宙機の設計・製造から打ち上げ後の運用までのライフサイクルを見据えて、新しい宇宙機システムを創り上げることが私たちの仕事です。私が現部門に配属された直後から関わる技術試験衛星9号機は、将来の高性能通信衛星の技術実証を目的としています。このキー技術の一つである新しい軌道制御技術について重点的に検討し、プロジェクトの立ち上げに貢献しました。 一連の工程を検討し、それぞれに必要な技術を活用してシステムを構築する作業は、首都大の研究室でも経験していました。もちろん規模の大小は異なりますが、私の感覚では現在の仕事も大学での研究の延長上にあります。特にトラブルに対処する基本的な姿勢は学生時代に培ったものであり、現在も在学中に使った教科書やノートをデスクに置き、しばしばページを開いています。 計画の初期から関わり思い入れのある技術試験衛星9号機は、2020年代前半に予定する打ち上げに向けて、現在もプロジェクトが進んでいます。打ち上げの瞬間を種子島で見たい気持ちもありますが、人工衛星のミッションは宇宙空間に到達したロケットから放出され運用が始まってからが本番。つくばに待機し、システムの目覚めを緊張しながら待つことになるかもしれません。 現状私たちの活動範囲は、地球とその周辺に限られています。しかし将来はその範囲を広げ、より遠くまで人が旅をできる時代を実現したいと考えています。それに貢献することが、私の夢です。国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)/研究開発部門 システム技術ユニット 研究開発員特集1卒業生インタビュー宇宙に関わる仕事に就きたいと、秋田県から首都大に入学。「宇宙システム研究室」で学び、アメリカで開催される学生を主体とした模擬人工衛星の打ち上げ競技会に参加。博士前期課程を修了後、2015年4月にJAXAに入り、有人宇宙技術部門での研修を経て、同年10月から現部署に所属する。Prole西 顕太郎 さん近未来の宇宙開発に求められるミッションを構想し実現のための技術を追求することで新しい宇宙機システムを創り上げる近現の新TMU #RESEARCH&ACTIONReport06システムデザイン研究科 システムデザイン専攻航空宇宙システム工学域 博士前期課程2015年3月 修了020Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2020
元のページ ../index.html#22