人文科学における言語に関する研究は、長い間、言語の構造や法則を説く理論言語学を中心としてきました。近年そうしたアプローチとは別に脳科学の領域では、乳幼児が言語を獲得する際の脳の働きや、失語症などの臨床医学に端を発する脳における言語の処理に関して研究が進んでいます。「言語の脳遺伝学研究センター」は、その2つの流れを合流させ、さらに言語の獲得や活用における個人の特性や環境の影響も視野に入れるべく遺伝学を加え、2014年に設立されました。東京都医学総合研究所とも協働し、都内の小学生と保護者に対して言語に関する調査を実施。統計学の手法も用いて、データの解析を進めています。 理論言語学、脳科学、遺伝学の研究者が連携する、日本で唯一、世界でも極めて希少な研究拠点。人間だけが持つ高度な認知機能である言語の本質解明を目指すとともに、言語コミュニケーションの促進という観点からも研究に取り組んでいます。 人文社会学部の「言語科学教室」では学生が理論言語学と脳科学の両方を学び、本センターでは異分野の第一線で活躍する研究者を招いたシンポジウムも開催。言語・脳・遺伝に関するこの先駆的研究を、広く発信することにも力を注いでいます。特集1TMU #RESEARCH&ACTION研究・プロジェクト紹介理論言語学、脳科学、遺伝学が連携し人間だけが持つ言語機能の本質を明らかにする言語研究における人文・自然科学を統合し新たな知見を世界に発信するCASE 1#言語習得#コミュニケーション#文理融合「言語の脳遺伝学研究センター」の研究体制人間だけが持つ高度な認知機能である言語にさまざまな分野からアプローチし、言語の本質と生物としての人間の特性を明らかにする。脳科学言語遺伝学発達科学10代へのコホート調査2014・2015年、東京都医学総合研究所と協働し、都内の小中学生とその保護者約2,000人に対し、ことばの獲得と活用などに関する調査を実施。現在、データの解析を進めている。人文社会学部(言語の脳遺伝学研究センター) 本間 猛 教授006Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2020
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