東京都立大学(旧首都大学東京) 大学案内 2022
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 八王子市役所に入庁し、市民活動推進部に在籍しています。4年間学んだ南大沢キャンパスがある八王子市は、多摩ニュータウンが広がる丘陵地のほか、山間部や平野部もあり、各地域に根ざした文化や生活様式は多様性に富んでいます。市内で生まれ育った古くからの市民に加え、外国人、都立大をはじめ市内に21校ある大学や専門学校に通う学生など、住民も様々。このような様々な方の市民活動を支援する仕事に惹かれ、入庁時に今の部署への配属を希望しました。 ここでの仕事は、市内に約570団体ある町会や自治会の活動を支援することです。それぞれの地域活動は各団体が自主的に企画・運営していますが、私たちは集会施設や街路灯の維持管理など、公共性の高い活動に対して交付する各種補助金制度の窓口となり、各団体から寄せられる申請や要望に対応しています。また、約570の町会・ 自治会を23地区に分けた各地区の代表者が集う八王子市町会自治会連合会の活動にも関わります。このような私たちの部署で審査や実施が可能な事案だけでなく、例えば土砂崩れなど自然災害により通行できなくなった道路の復旧など、他の部署が所管する仕事であっても、まずは市民の窓口として話をうかがった上で、所管部署に案内することも大切な仕事です。日常の業務は庁舎内で対応しますが、時には補助金の申請内容などの確認のため、地区の集会場などの現場に足を運ぶこともあります。 私が行政の仕事に関心を持つきっかけとなったのは、3年次に参加した佐渡島でのフィールドワークです。社会人類学の調査のため訪ねた港町では、海運と観光で栄えたというかつてのにぎわいを探すのは困難でした。地域の住民が高齢化や過疎化が進む中で、生き生きと暮らすために何が必要かを考えた時、行政が果たせる役割に思い至り、地域住民のために力を尽くす仕事のやりがいを想像したのです。その経験は、進路が定まっていないからこそ、人文社会学部で幅広く学ぶことを選択した私が、初めて大学での学びと将来の仕事を結び付けて考えるきっかけとなりました。社会人類学が教えてくれた、現場の実態から考えることの大切さは、公務員となり改めて実感しています。また、少人数のゼミを通して養われた、人の話を丁寧に正しく聞く姿勢は、町会・自治会を支援する仕事を支える柱となっています。 2019年4月、八王子市は、町会・自治会を「市との協働による街づくりのパートナー」と位置付ける条例を施行し、町会・自治会と市との関係を明文化しました。市民から信頼される真のパートナーとなれるよう、地域の魅力と課題を理解するための勉強は日々続いています。教育学・心理学に関心を持って入学したが、1年次に人文社会学系の学問を幅広く学んだ中で、人類学に興味を抱く。同分野の実習として参加したフィールドワークでの経験から、行政に進む道を選択し、現職に就く。Prole川上 愛理 さん都市教養学部 都市教養学科人文・社会系 社会学コース(現 人文社会学部 人間社会学科)2017年度卒業生八王子市役所/市民活動推進部 協働推進課社会人類学の調査で訪れた、かつて海運と観光で栄えたという港町。地域の住民が、この先もずっと生き生きと暮らすためにできることを探る。かつ地域Report01015特集1/卒業生インタビュー

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