東京都立大学(旧首都大学東京) 大学案内 2022
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 私が勤務するのは、様々な病期の患者さんが入院するケアミックスの病院。亜急性期・回復期・療養・介護など、病期が異なる患者さんに対するリハビリテーションを、作業療法士として担当しています。 本院のリハビリテーション科には21名の作業療法士が在籍し、交替で出勤し患者さんの生活動作の回復をサポートします。リハビリに来る患者さんは、平日は8人前後、休日は6人ほど。1人に対し、1回約1時間のリハビリプログラムが組まれています。 健康や回復の状況に関する情報はカルテで共有しているため、どの患者さんにも対応できますが、主担当となる患者さんをスタッフがそれぞれ受け持っています。担当患者については月に1度、医師や看護師と共に開くカンファレンスの席で、作業療法士の視点で回復状況や、今後の方針などに関する意見を述べます。全ての患者さんが自宅に戻り生活を送れることが望ましいのですが、医師が診た病状、看護師が知る病棟での様子、作業療法士が判断する回復状況のほか、地域や家族など患者さんを取り巻く環境や事情で帰宅が叶わないケースも、しばしば起こります。そうした状況であっても、患者さんが“その人らしさ”を失わずに生活できるようサポートすることが、作業療法士の役割だと考えています。 作業療法の技術を提供することだけが、私たちの仕事ではありません。当たり前の日常生活が困難になった方が、何を生活のハリとして笑顔を取り戻すきっかけにできるかを判断する“その人らしさ”の発見が作業療法士の重要課題であることを、健康福祉学部で学びました。その教えは、今も私の仕事のぶれない根幹となっています。 例えばかつて担当した患者さんは病気による失明で、生きる気力も失っていました。リハビリにも無気力でしたが、何度も話を聞くうちに、自慢のギター演奏ができなくなったことが絶望感につながっていそうだということがわかりました。そこで私は、ギターを手に入れて患者さんに教えてもらうことにしました。不器用さにあきれられながら指導を受ける中で、次第に笑顔を取り戻していく患者さんを目の当たりにした私は、たとえ健康な時の状態に戻れなくても、“その人らしさ”を再生できる可能性と、学部で学んだことの正しさを確信しました。 患者さんの状態に応じて一人ひとり異なる作業療法の技術は、実務を重ねる中で身に付けるものだと思います。そうした技術の前提となる、作業療法士の基本姿勢を在学中に学べたことが、今の私の財産です。社会医療法人社団大成会 長汐病院/リハビリテーション科人の役に立てる医療の仕事がしたいと考え、作業療法を学ぶ。在学中は4年間、硬式野球部のマネージャーを務め、2年次以降、練習日は荒川キャンパスから南大沢キャンパスに移動し、実習を含めた授業とクラブ活動を両立させた。Prole小林 萌花 さん健康福祉学部 作業療法学科2014年度卒業生日常生活に必要な動作回復のサポートは当たり前。“その人らしさ”を発見し笑顔でいられるための支えを提供する。サポ“そのReport07021特集1/卒業生インタビュー

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