東京都立大学(旧首都大学東京) 大学案内 2022
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都立大生のインタビューは、ホームページにも掲載しています。アクセスはコチラから都立大生のリアルボイスProfileProfile2人の教員がペアを組んでドイツ語圏の映画を、学生と批評映画作品を徹底的に分析し学術的に論じる面白さに触れる映画批評を通して、多面的な物の見方を学ぶ 1945年から今日に至るまでの、ドイツ語圏における映画のテーマやスタイルの変遷を概観します。授業では、第二次世界大戦が終結して以降の各時代を代表する作品を鑑賞し、それぞれについて歴史的・政治的・社会的な背景と結びつけながら作品を考察します。学生同士の議論や学生自身の言葉による記述に、教員による解説も加え、多面的に作品を批評します。退屈なメロドラマに思える作品、平凡な食事や風景描写のシーンも、作品が製作された、あるいは作品に描かれた時代の背景を考えて見直すと、その時代の政治的な意図や社会性が読み取れ、映画鑑賞に厚みが増します。 2人の教員がペアを組んで行う授業であることも特徴。シュレンドルフのドイツ語を福岡が日本語に置き換えていきますが、2人の文化的ルーツが異なる上、共にオーストリア文学を研究しつつもテーマは違うため、複数の視点が交差する講義となります。 映画作品を分析したり優れた論文や批評を読んだりすることで、映画を学術的・批評的に論じる方法を身につけていきます。 過去には小津安二郎監督やアルフレッド・ヒッチコック監督、フランスの映画運動ヌーヴェルヴァーグを取り上げました。最近は、2015年の日本映画『ハッピーアワー』の分析を行いました。演技経験のない女性たちに国際映画祭で最優秀主演女優賞を獲得させるなど優れた演出が国際的に評価された作品です。濱口竜介監督自身の文章や本作を論じた評論などを読んで議論しながら、映画がどのように作られているのかについて理解を深めていきました。 映画はただ観るだけでも楽しいですが、分析の方法や理論的な知識を身に付ければ、また違った楽しみ方ができます。学生にとって「経験」として残るような授業となるよう監督をゲストに呼ぶなど工夫を凝らしています。 この授業では、ドイツ語圏の映画を鑑賞、批評する事を通してドイツ語圏の文化や価値観、歴史について学ぶ事ができます。オーストリア人と日本人の教員がそれぞれの言語で授業を行うため、ドイツ語力を鍛える事ができます。また、ドイツ語圏への留学を考える学生にとっては、ドイツ語を用いた講義形式の実践的な練習にもなります。 私にとって最も魅力的だったのは、作品について様々な専攻の学生と行う議論です。主人公の心情の移り変わりに着目する人や歴史的背景を重視して考察する人、英文学や日本文学といった他のジャンルの文学作品との類似性を見い出す人。同じ作品を観ても、学生によってその受け取り方は様々です。教員、学生同士で議論を繰り返す中で多面的な物の見方を学び、卒業論文の執筆でもそれを活かす事ができました。人文社会学部 人文学科3年和歌山県 私立和歌山信愛高等学校 出身都市教養学部 都市教養学科人文・社会系 国際文化コース 2019年度卒業生東京都 私立十文字高等学校 出身石口 祐実 さん中山 ゆき さんNOTICE卒業後はドイツとも取り引きするメーカーに就職しますNOTICE芸術と社会が影響し合う相互関係について考察していきたい学術的な分析や他者の視点が作品理解を深める 2019年度は、前期にアルフレッド・ヒッチコック監督の作品を分析し、後期には濱口竜介監督による映画作品『ハッピーアワー』を取り上げ、作品について書かれた文献を読み、監督の演出意図などを考えました。どちらにおいても、一人で観た時には気づかなかったり魅力的には思えなかったりしたシーンが、学生同士の議論、先生による解説、そして学術論文の精読によって輝き始め、そのことに感動するという経験を何度もしました。 映画に限らず芸術作品の鑑賞は、とかく個人の感性や捉え方が重視されがちです。しかし、それぞれの表現に関する基礎的な理論や知識、他者の見方や意見など、自分以外の視点を取り込むことで、作品への理解が深められることや興味の範囲を広げられることを実感しました。授業 Pick up 1ドイツ語圏文化史/SCHLÖNDORFF Leopold(シュレンドルフ レオポルト) 准教授・福岡 麻子 准教授授業 Pick up 2芸術表象論/角井 誠 准教授※学生の所属・年次等は2020年度時、内容は履修時のものです。049人文社会学部

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