東京都立大学(旧首都大学東京) 大学案内 2022
8/164

 古代ギリシャ時代の哲学には、今でいう物理学や生物学が含まれます。人間についてはもちろん、水や空気、天空の星々、木や金属といった物質、炎や腐敗などの現象、そして人間以外の生物など異なる対象を、自身の身の回りの「世界を理解する」哲学の枠組みとして一つの世界観を形成していました。そうした過去の説の多くは、近現代に発展するサイエンスによって否定されました。しかし多様な異なるものを混合させ秩序立てた世界観は、現代のグローバル社会のあり方に通じています。 私が古代ギリシャ哲学史を専門とする目的は、過去を知ることでもなければ、過去と照らし合わせて現代を理解することでもありません。世界を知ろうとする人間の知的欲求において過去と現代は同価値であり、その間途切れることない人間の知的活動の軌跡を明らかにしたいと考えています。もちろん、過去の人が現代人と比べて知的レベルにおいて劣っているとは考えません。むしろ、現代人が科学技術の恩恵による利便性に頼り、自身の知力により世界を考えようとしていないのであれば、過去の人々から学ぶべきことがたくさんあるのではないでしょうか。特集1TMU #RESEARCH&ACTION研究・プロジェクト紹介古代と現代の知的活動を同価値とし人間が形成した世界観の軌跡を追う古代哲学と現代のグローバル社会は混合という捉え方で通じ合うCASE 1#古代ギリシャ哲学#グローバル社会#純粋と多様性過去も現代も見ている世界は同じ=同価値古代ギリシャやローマ時代の人々は、今であれば異分野とされる学問を「哲学」という一つの枠組みで捉え、世界を理解しようとしていました。こうした世界の捉え方は、多様な要素が混在するグローバル社会と相似形にあり、現代社会や未来を考えるヒントや示唆になり得ると考えています。人間を理解自然を理解物質を理解人間以外の生物を理解多人種多民族多言語多文化多宗教世界を理解しようとする哲学の概念グローバル社会の様相過去現代世界人文社会学部 GROISARD Jocelyn(グロワザール ジョスラン) 准教授006Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2022

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る