東京都立大学(旧首都大学東京) 大学案内 2022
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 法学研究に「法と経済学」という学問分野があります。伝統的な法学研究が比較法研究や判例研究を主とするのに対し、「法と経済学」は経済学の視点や手法を用いて法制度を分析します。会社法や商法を専門とする私が「経済学の視点」で着目するのは法制度の機能と効率性および当事者の行動インセンティブです。前者では、とある目的を達成するための制度設計に選択肢がある場合、合目的でかつ効率性の高い制度はどれかを考察し、後者は制度の対象となる当事者の行動の動機づけや遵守に努める要因を分析します。 こうした観点で私は株主代表訴訟について、日・米・中それぞれの制度を比較しながら、より合理的な制度のあり方を研究しています。1株を持っていれば訴訟を提起できる日・米では、制度の濫用が危惧され、訴えの却下や和解を含めて訴訟を終了させる制度の整備が重要です。一方、発行株式数の一定割合を有していないと訴訟を起こせない中国では、2006年に制度が導入されほとんど活用されていません。会社に対する経営者の責任を問う株主代表訴訟が、活発かつ健全に利用されるための制度設計を、学生にも問題提起しながら考えています。法と経済学の視点や手法を用いて法制度の合理性と効率性を分析する日・米・中の株主代表訴訟を比較し活発かつ健全な利用を促す制度を考えるCASE 2#コーポレート・ガバナンス#株主代表訴訟#会社法・商法#法制度の効率性「法と経済学」の観点で株主代表訴訟を考える比較法研究判例研究経済学の視点・手法株主代表訴訟伝統的な法学研究法と経済学株主代表訴訟を定めた会社法は、社会情勢やビジネスの動向に合わせて、法改正が頻繁に行なわれます。こうした法制度の分析には、特に「法と経済学」の研究手法が適している面があります。会社(=全株主)に対する経営者の責任を問う重要な制度法の体系や運用の公平性・整合性を問う制度設計の効率性当事者のインセンティブを問う法学部 顧 丹丹 准教授007特集1/研究・プロジェクト紹介

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