東京都立大学 大学案内 2026
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懸念 CASE3CASE4□□研究プロジ□クト免疫(リンパ球)の活性化抗原提示抗原ペプチド(認識因子分解酵素BAG6)不良タンパク質プロテアソームの認識による分解 安全資産を担保に一時的に資金貸し付け不良タンパク質のかけら(ウイルス由来)不良タンパク質の合成「最後の貸手」の機 能と懸念最 後 の 貸 手( 中 央 銀 行 )流 動 性 不 足 の金 融 機 関タンパク質 分 解システムが 操るウイルス免 疫の 新 機 構ヒト細 胞 2023 年 3 月、米シリコンバレー・バンクが 経営 破 綻しました。この経営破綻の裏にあったのはSN S の 情報拡散を通じた大規 模な「 銀 行 取り付け」。些細な良くない情報が拡散されれば、たとえ 銀 行 経 営 に 問 題 が なくても、取り 付 け は 発 生 します。こ れまで 国 や 時 代 を問 わず、銀 行 危 機は 繰 り返されてきました。銀行危機に対し、どのように対 処すればよいでしょうか。中央 銀 行には「最後の貸手」と呼ばれる機能があります。この機能は、流動性不足に陥った 金 融 機 関に対して、中央 銀行が安全資産を担保に一 時的な貸し付けを 行うことをいいます。その 銀 行の破 綻により金融 システムが 混乱し崩壊するこ とを防ぐこ とが目 的です。しかし ながら、危機 時に中央 銀 行 が 救 済してく れると民間銀行が予想すれば、適切な貸し付け業 務を怠り、リスク資 産の 過 度な保 有を促す可能性(モラルハザード)があります。金融 機 関のモラルハ ザードを 抑 制しつ つ 金融システムを安定化させる制 度 を構築することは社 会的 課 題 です。こ の課 題 に 取り 組 む た め、私 は 共同 研 究 者と理 論 モデル を 開 発 し、「最 後 の貸 手」政 策 の理 論 的 分 析 を 行 い ま し た。本 研 究 を継 続 し、金 融 シ ス テ ム の 安 定 化 に貢 献 し たいと思っています。 生物学の教科書には、転写・翻訳のシステムが巧みにタンパク質をつくり出す様子が記されています。しかし、実際のタンパク質合成の現場では、このプロセスの成功効率は必ずしも高くありません。健康な我々の細胞でも、膨大な数量の不良(出来損ない)タンパク質が日常的に産生されているのです。私たちの研究室では、これら、新合成不良タンパク質を認識し、分解系へ誘導する新しい細胞内システムを発見しました。最近、とみに注目されているのは、不良タンパク質の分解産物です。これらは無用の廃棄物ではなく、免疫系に必須の役割を果たしていることがわかってきました。リンパ球の標的となる抗原ペプチドこそ、私たちが研究している不良タンパク質の分解産物なのです。例えば、ウイルス感染細胞内で、ウイルスタンパク質の分解産物が抗原ペプチドとしてリンパ球の活性化を促しています。最近、接種が進んでいる新型コロナウイルスワクチンも、ウイルス由来の不良タンパク質を私たちの細胞内で生成・分解することで、リンパ球の標的となる抗原ペプチドを積極的に産生させているのです。都立大の研究室では、今後の新しいワクチン開発などにも役立てるため、タンパク質分解の基礎研究を活発に進めています。金融 システムの安定化という社 会的 課 題に 挑む新合成不良タンパク質を認識し分解系へ誘導する細胞内システムを発見・解明銀行の破綻により金融システムが混乱し崩壊することを防ぐ銀 行 の 事 前 のリスク・テイキングに与える影響(モラルハザード)担保の範囲内(低金利)の緊急融資はモラルハザードを誘発しない32Tokyo Metropolitan University GUIDE BOOK 2026□□□行の「□後の□手」機能と金融機関の□ラル□□ード□ン□ク□分□システムが□る□イルス□□の□機□経済経営 学部 松 □ □□□ 教授理学部 □□ □□ 教授

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