東北大学広報誌 まなびの杜 No.79
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仙台市と東北大学環境科学研究科の知の貢献「たまきさんサロン」和田山 智正◎文text by Wadayama Toshimasa和田山 智正(わだやま としまさ)1959年生まれ現職/東北大学大学院   環境科学研究科 教授(広報室長)専門/表面科学、材料科学関連ホームページ/http://www.kankyo.tohoku.ac.jp/http://www.tamaki3.jp/(仙台市環境Webサイトたまきさん)地域大学と02|まなびの杜 79号 二〇一六年春、青葉山新キャンパスに環境科学研究科本館が竣工しました。この一階に「せんだい環境学習館 たまきさんサロン」が入居しているのをご存じでしょうか。「たまきさんサロン」とは、環境について考え、学び、交流の輪を広げるために、仙台市が運営している公共の場です。宮城県産の杉材でできたテーブルと椅子が備えられたサロン内には、環境に関する書籍や学習教材が各種取り揃えられ、閲覧と貸し出しが可能です。また、講義形式のイベントを開催できるようセミナースペースも設けられ、公開講座などを通じての学びと実践を後押しできるようになっています。 これまでも仙台市では、同じ目的の「環境交流サロン」を市内で運営していましたが、地下鉄東西線開通により利便性を増したこの青葉山で活動をさらに充実させるべく、研究科本館竣工にあわせて引っ越し、同居することになったものです。この新たな出発を機に、名称も「環境」の「環」の字をとって「たまきさんサロン」という親しみやすい名前に生まれ変わりました。 「たまきさんサロン」は、東北大学の施設に行政のオフィスが入る初めてのケースです。この背景には、二〇〇九年に研究科と仙台市との間で取り交わされた連携と協力に関する協定があります。大学と行政が地域の環境問題に関する共通の認識に立ち、持続可能な社会を構築することをめざしたこの協定の精神に則り、研究科と仙台市はこれまで様々な連携活動を行ってきました。研究科本館へのサロンの同居はこの活動の一環でもあり、また、連携のシンボルとも言えるでしょう。 四月に行われた本館開所式は、サロンのリニューアル開所式との共催で行われ、本学里見総長をはじめとする大学関係者とともに、仙台市から奥山市長や議会関係者の方も多数お見えになりました。本学里見ビジョンの一つに、「多様な価値観が交流し、多文化が共生する開かれたキャンパスの実現」がありますが、このビジョンを実践する一例として、この同居の持つ意味はきわめて高いものと考えております。 「たまきさんサロン」を通じた大学と行政の連携と開かれたキャンパス実現への歩みは、合同開所式の日から早速始まりました。 式典後、元環境科学研究科教授で地域に根ざした持続可能なライフスタイルの研究で知られる東北大名誉教授の石田秀輝先生を講師に、ゲストとして『殿、利息でござる!』など、仙台を舞台にした作品でも有名な映画監督の中村義洋さんをお招きし、「ふるさとの声を聴く」と題し、地域に残る「大切なこと」の伝達について、講演会と座談会が仙台市主催で開催されました。 以降、二〇一六年に開催されたサロン講座は一七回、そのうち七回で東北大教員が講師を務めました。外部講師による講座も、手仕事や伝統文化、仙台のくらしなど魅力的な内容で、こうした公開講座を通じて多くの方々が環境科学研究科本館にお越しになりました。     今後も仙台市民と大学との出会いの場として、大学初の行政オフィスを活用し、地域への知の貢献をめざしていきたいと思います。この取り組みが実り多いものになるよう、みなさまのご協力・ご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。「たまきさんサロン」とは?行政との連携による開かれたキャンパスの実現へ大学と市民が出会う場所

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