東北大学広報誌 まなびの杜 No.80
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 私の恩師である第十代東北大学総長黒川利雄先生は、若手研究者を激励するため色紙に「山上に山あり山また山」とよく揮毫しておりました。これは「山上山有山幾層 波間道無道縦横」という中国の言葉から採ったと言われております。黒川先生は、東北大学医学部第三内科学講座(消化器内科)の教授、医学部長、総長、日本学士院院長等の要職を経て文化勲章の栄誉に浴した偉人です。宮城県対がん協会の創立者で初代の会長でもあり、日本で初めて胃がんの集団検診を行った方です。私も医師になったときから、当時日本で最も多かった胃がん患者を救いたい気持ちで先生の消化器内科に入局し、臨床研鑽を重ね学位を授与されてすぐ対がん協会検診センターに就職し、胃がん早期発見のため胃X線診断、内視鏡検査、疫学調査の実務に没頭したものです。当時は極めておおらかな時代で、センターの職員として給料をもらいながら大学病院の入院患者を受け持って治療に当たっていました。無症状のうちに検診を受ければこんなにも早期がんが発見できて、従来は救命できなかった胃がん患者さんが次々と助かるのを見て、毎日ワクワクしながら仕事をしておりました。そんな中で東北大学医学部公衆衛生学講座の教授に招聘されたのです。自分で応募した訳でもないのに教授選考委員会が勝手に候補者として選出し、年収が半分になるけれど来てくれますか、と医学部の事務長が交渉に来たのです。私はそれまでの約十七年間は消化器内科の臨床医で疫学(予防医学)を専門に学んだわけではなくいささか不安でありましたが、母校の教授になれるなんて光栄なことでしたので思い切って就任したのです。知らない人は私を臨床の全く知らない基礎医学者と誤解されるようですが決してそうではありません。がん集団検診を中心にがんの疫学、その公衆衛生対策への実践活動、評価研究を新しい手法(臨床疫学、EBM : Evidence-based Medicine、判断分析学、TA:技術評価など)を駆使して研究や教育に力を注ぎました。 先日、東京で「山上の光賞」を受賞する機会を得ました。この賞は、七十五歳以上になっても日本における広範な健康・医療・医学分野で様々な活躍を続けている方を顕彰する賞です。私は「公衆衛生部門」で頂きましたが、賞の名前から黒川先生の色紙を思い出し、先生の理念に少しでも手助けができたのではと喜び、東北大学という学恩を感じました。久道 茂(ひさみち しげる)公益財団法人宮城県対がん協会 会長1939年生まれ東北大学医学部医学科卒メール : kaicho-sh@miyagi-taigan.or.jp10|まなびの杜 80号久 道 茂From OBOBからのメッセージ私の中の「東北大学」山上に山あり山また山参加費無料(事前申込は不要です。)8月25日(金)サイエンスカフェ第143回スマホのシェイクを感じる小さなセンサ、次は社会を大きく変える~MEMSとIoTのお話し~田中 秀治(工学研究科 教授)会場:せんだいメディアテーク 1F オープンスクエア9月29日(金)サイエンスカフェ第144回超巨大ブラックホールの謎秋山 正幸(理学研究科 准教授)会場:せんだいメディアテーク 1F オープンスクエア7月28日(金)リベラルアーツサロン第48回インクルーシブ社会の実現を目指して~発達障害の理解~野口 和人(教育学研究科 教授)会場: せんだいメディアテーク 1F オープンスクエア7月19日(水)サイエンスカフェ第142回あなたのデータで医療を変える荻島 創一(東北メディカル・メガバンク機構 准教授)会場:せんだいメディアテーク 1F オープンスクエア東北大学総務企画部広報課社会連携推進室 TEL.022-217-5132http://cafe.tohoku.ac.jp/ホームページお問い合わせ18:00~19:452017年度7月~9月サイエンスカフェ ・ リベラルアーツサロンINFORMATION2017年度7月~9月の東北大学サイエンスカフェ・リベラルアーツサロンのテーマ、講演者をお知らせします。◎東北大学基金事務局〒980-8577 仙台市青葉区片平2-1-1☎022-217-5905kikin@grp.tohoku.ac.jp未来ある人材を育むために東北大学基金へのご協力をお願いいたします。東北大学

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