東北大学広報誌 まなびの杜 No.80
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まなびの杜 80号|07最新の研究ラインナップ大谷栄治名誉教授がヨーロッパ地球化学会(European Association of Geochemistry, EAG)の最高賞The Urey Awardを受賞工学研究科博士課程3年 小川由希子さんが第7回日本学術振興会育志賞を受賞理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター太田雄策准教授が第49回市村学術賞を受賞長谷川昭名誉教授、横堀壽光名誉教授が日本学士院賞を受賞01/2602/0303/1303/14オートファジーによる筋細胞再構成機構の発見―昆虫の変態期に見られるオートファジーの新機能―本学大学院生命科学研究科の藤田尚信助教・福田光則教授らは、東京大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究により、ショウジョウバエの筋細胞がオートファジーによって大規模に作り替えられる現象を発見しました。常に運動や老化で傷害を受ける筋細胞の再構成を解明するため、ヒトと同様に高度に構造が分化したショウジョウバエの筋細胞を解析。その結果、変態期に腹部の筋細胞が壊された後に再形成される現象を発見。筋細胞の再構成に関わる遺伝子として、オートファジー経路に関わる一群の遺伝子を同定し、さらに筋細胞の機能を失わせるよう働きかけるRab2(低分子量Gタンパク質)を同定しました。本成果は、国際的オープンアクセス科学雑誌 eLife 電子版に掲載されました。032017/01/11最近30年の、日本語の色名語の進化を導出―『青々とした緑』という表現の背景―本学電気通信研究所の栗木一郎准教授らの研究グループは、日本人に共通する19色名の存在を確認し、30年前の同様の研究と比較。増加が認められることから、色概念の表現が今も進化していることを立証しました。「青々とした緑」のような平安以前からの表現に着目し、青と緑の区別を統計学的に立証し、この日本語独特の言葉遣いの経緯も明らかにしました。一方、視覚情報である色の情報がどのように脳内で形成され、個人差や言語差の影響をどう受けているか、計算的・統計的手法を用いて可視化しました。この成果には、視覚メカニズムの解明に関する電気通信研究所の技術と基礎研究の知見が活かされ、人と人、人とAIの間により質の高い意思疎通を可能とする情報通信技術の実現に、示唆を与えると期待されます。072017/03/02世界初、変形機構を制御する人工分子システム―「アメーバ型分子ロボット」を開発―本学大学院工学研究科の佐藤佑介・大学院生、野村 M. 慎一郎准教授らの研究グループはDNAやタンパク質などの生体分子からなる「分子機械」を人工細胞膜内に統合し、変形機構を制御する「アメーバ型分子ロボット」を開発しました。分子ロボットは、極小で複雑な環境下で命令通りに働くことができます。アメーバ型分子ロボットは、信号を認識してアクチュエータを制御するシステムを、分子機械の統合で実現した世界初の成果です。本成果をプラットフォームとして、様々な機能を持つ分子ロボットの開発はもとより、将来的には、細胞レベルでの診断・治療や環境汚染のモニタリングなどへの応用が期待されます。この成果はアメリカ科学技術振興協会(AAAS)刊行の科学雑誌 Science Robotics に掲載されました。082017/03/02通電不要のイオン制御型電磁石を開発―イオンの出入りがON-OFFスイッチに―本学金属材料研究所の谷口耕治准教授、宮坂等教授らは、金属錯体からなる分子性格子材料へのイオンと電子の出入りを制御することで、磁性状態のON-OFFスイッチが可能な新たな電磁石の開発に成功しました。これは、多孔性の分子層状化合物をリチウムイオン電池の正極材に用いて、二次電池の充放電特性を利用。これにより可逆的にイオンと電子が正極材に脱挿入(充放電操作)され、正極材の磁石としての性質(フェリ磁性状態)を充放電操作に連動してスイッチングできることを解明しました。さらにこのイオン制御型電磁石は、フェリ磁性状態にスイッチすれば、通電しなくても磁石の性質を維持できることから、新たな低消費電力の電磁石としての応用などが期待されます。本成果は、材料科学誌 Advanced Functional Materials 電子版に掲載されました。042017/01/13

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