東北大学広報誌 まなびの杜 No.81
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働ネットワーク(enPiT)のうち、セキュリティ分野(enPiT-Security/愛称SecCap)に参画しました。五つの大学院が連携してSecCapコースを実施してきて、補助事業期間後の二〇一七年度以降も継続しています。 二〇一六年度から始まった学部生対象のenPiT第二期では、東北大学がセキュリティ分野の代表となってセキュリティ人材の裾野の拡大を目指す提案が採択されました。二〇一七年度は十四の大学が連携してBasic SecCapコースの科目を開講し、幅広いセキュリティ分野の最新技術や知識を、体験を通して習得することができます。 SecCapコースでは、情報セキュリティ対策を技術面と管理面で牽引できるエキスパートを育成するために、コースが提供する科目として、基礎力のための共通科目、実践力のための演習、応用力のための先進科目を設けて、暗号技術、ウェブサーバ・NWセキュリティから、法制度やリスク管理まで幅広く、連携五大学が提供しました。所定の修了要件を満たしてSecCap修了認定を受けた受講者は期間中に四○○名以上でした。 情報システムやネットワークが生活や社会活動のインフラになったことで、事故や攻撃に備える情報セキュリティが重要になりました。その対策に関わる者には、通信・情報技術の知識に加え、実際のシステムの作りや振る舞いについて実践的な知識や経験も必要です。そのような実践的セキュリティ人材育成が、今日の大学の情報工学系の課題です。 東北大学の情報科学研究科は十年以上前から、地元のIT企業や他校と組んで、実際のソフトウェア製品やサービスシステムを考えて作れる、実践的スキルの教育に取り組んできました。セキュリティ人材育成については、二○一二年から文部科学省に採択された実践的情報教育協 一方、Basic SecCapコースでは、対象は主に学部三年生ですが、一般市民からエキスパートまでを含めて、先進技術の基本的知識と、リスクを評価し対応できる知識や実践力を備えた人材を育成します。特に演習科目を重視し、十四の大学がそれぞれ講義と演習を分担しています。 既存の科目から基礎科目を指定するほか、専門科目として総論(五科目)があり、演習科目は各大学が特徴的なPBL演習(十四)を用意し、さらに高度なスキルを目指す少数の者を対象に先進演習科目(十一)があります。東北大学は、総論として「評価・対策技術・体制・倫理」、演習としてクラウド、先進演習として制御システムを扱うものを開講しています。  全国の十四大学の共同事業として各科目を連携校に、さらに他の参加大学・高専にも提供するため、インターネットを用いる遠隔講義や夏期集中スタイルの演習などを行っています。これにより多くの大学で実践的人材育成の教育を受けられます。その運営とともに、授業内容の工夫とコースの実施拡大も課題です。各大学の教員が相互に視察してコメントを交わし、互いの参考にするFD(Faculty Development : 教育力向上の取り組み)活動にも力を入れています。 実践的で多様な演習を行う上で、産業界、あるいはセキュリティ関連団体の協力が欠かせません。実践的人材を十分な人数規模で輩出するためにも、協力していただける連携企業をさらに拡げて、もっと多様な実践的演習を取り入れたいと考えています。曽根 秀昭(そね ひであき)1956年生まれ現職/サイバーサイエンスセンター   教授・大学院情報科学研究科兼務専門/通信ネットワーク、環境電磁工学、   電気計測工学関連ホームページ/www.seccap.jp/basic/曽根 秀昭◎文text by Hideaki Soneまなびの杜 81号|01セキュリティ人材の裾野を拡げるために技術面と管理面を牽引するエキスパートの育成大学連携と産学連携による多様な教育へ専門科目の教室風景実践的セキュリティ人材演習科目経験的知識基礎科目基礎知識専門科目総合的知識先進演習科目(enPiT第2期)Basic SecCapの科目群「教育」考│新世代へのメッセージ│情報セキュリティ教育へのチャレンジ    ―大学間連携と産学連携のSecCapコース―

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