東北大学広報誌 まなびの杜 No.82
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 東北大学在籍中の六年間で三回の引越し。これは私の住居ではなく、「研究室の装置」の引越し回数です。二〇〇八年の修士課程入学当時、青葉山キャンパス物理A棟(現:物理系研究棟)一階に実験室がありましたが、建物の耐震工事のため、一時的に理学研究科総合棟(現:合同B棟)に間借りすることになりました。数百メートルの移動ですが、光電子分光という実験を行うための装置は一トンを超える精密機器なので、これを動かすのは大変です。移設のため、クレーンでつられた装置の姿は圧巻でした。耐震工事後に二回目の引越し。そこで装置の立ち上げをした半年後、東日本大震災が起きました。震災からの復旧には二ヶ月ほどかかりましたが、無事に装置が動いた時はほっとしたのを覚えています。私の指導教官の高橋隆先生は、理学研究科教授とWPI─AIMR(本学原子分子材料科学高等研究機構⦅現:材料科学高等研究所⦆)主任研究員を兼任されており、震災から約半年後の八月、片平キャンパスのWPI─AIMR本館に、研究室の装置半分を移設することになりました。私が使用していた装置は引越し対象だったため、めでたく三回目の引越し。先の二回と異なり、公道(しかも急な坂道!)を輸送するため、警察車両先導で夜中の引越しとなりました。引越しにも慣れたようで、装置立ち上げもスムーズでした。 振り返ってみると、大学院五年と博士研究員一年の計六年間、私は実験装置と一緒に成長したと思っています。一緒に苦楽をともにした装置は、私が修士課程に入学した頃に建設が始まり、最初のクリスマスに当時世界最高の性能を達成し、引越しも震災も経験し、私の博士論文の実験も全て測定してくれました。当時は、装置の調子が悪いと憎たらしく思っていましたが、成長のための試練だったと思って許すことにします。また、片平キャンパスで知り合った研究者には、分野は違えど、今でも交流が続いている人も多く、大きな財産になっています。 最後に研究以外の思い出も少し。仙台は街も海も山も近いので、研究室の仲間といろいろ遊びに行きました。登山、スキー、海辺で花火、早起きして塩釜の朝市に海鮮丼を食べにも行きました。総合学術博物館もおすすめです。 現在は、学生を指導する立場になり、自分が学生だった頃を反省し、指導して頂いた先生方に感謝する毎日です。今だから思うことは、「研究も遊びも全力だった学生時代の経験は、良いことも悪いことも必ず役に立つ」ということです。そんな学生生活を満喫できるのが、東北大学の最大の魅力だと思います。 高山 あかり(たかやま あかり)1985年生まれ東北大学大学院理学研究科物理学専攻卒現職/東京大学大学院理学系研究科助教日本学術振興会育志賞・東北大学総長賞受賞(2013年)10|まなびの杜 82号高山 あかりFrom OG研究も遊びも全力で◎東北大学基金事務局〒980-8577 仙台市青葉区片平2-1-1☎022-217-5905kikin@grp.tohoku.ac.jp未来ある人材を育むために東北大学基金へのご協力をお願いいたします。◎卒業生メッセージOB●OG Messege&参加費無料(事前申込は不要です。)3月2日(金)リベラルアーツサロン第51回フランス近代詩を読む―ボードレールからの出発―坂巻 康司(国際文化研究科 准教授)会場:東北大学片平キャンパス片平北門会館2Fエスパス3月16日(金)サイエンスカフェ第150回追跡!体内の薬のゆくえ~機能画像からはじまる未来医療~志田原 美保(医学系研究科 講師)会場:せんだいメディアテーク1Fオープンスクエア2月23日(金)サイエンスカフェ第149回宇宙に響くさえずりとジオスペース加藤 雄人(理学研究科 准教授)会場:せんだいメディアテーク1Fオープンスクエア1月19日(金)サイエンスカフェ第148回食べ物を美味しくする加工技術~故きをたずねて新しきを知る~藤井 智幸(農学研究科 教授)会場:東北大学青葉山キャンパス青葉山コモンズ1F東北大学総務企画部広報課社会連携推進室 TEL.022-217-5132http://cafe.tohoku.ac.jp/ホームページお問い合わせ18:00~19:452017年度1月~3月サイエンスカフェ ・ リベラルアーツサロンINFORMATION2017年度1月~3月の東北大学サイエンスカフェ・リベラルアーツサロンのテーマ、講演者をお知らせします。東北大学

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