東北大学 工学部 材料科学総合学科 研究室紹介
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研究室TOPICS【教授】 朱 鴻民 【准教授】 竹田 修 【助教】 盧  鑫 http://www.material.tohoku.ac.jp/~denka/lab.htmlメンバー全員が職人の腕前? 写真の実験器具、実はこれすべて学生さんの手作りなのです。「高温の液体を扱う実験なので、壊すことも多いですが、また新たに作ったり、修理したりするのもお手の物ですよ」。朱研究室において必須のスキル、それがガラス製作技術なのです。 研究室に配属後、まず行われるのが、朱先生による講習。玄人はだしの腕前に感嘆する間もなく、すぐに実技へ。それから時間を見つけては練習に励み、3か月も経てば、単純な形の試験管であれば自分で作れるようになるのだといいます。朱研究室が自作にこだわるワケは大きくふたつ。ひとつは、市販品にはない形、使い勝手のよい実験器具をつくれるということ。そして、時間と研究費の節約になるという涙ぐましい理由も。オンリーワンの実験器具から、ナンバーワンの研究成果が生まれていきます。金属フロンティア工学コース Course of Metallurgy11より高機能でより環境に優しい材料を創出する。 現在、日本は、東日本大震災に伴う原子力発電所での事故を受けて、電力源のほとんどを火力発電に頼っています。しかし、火力発電の利用は、原料コストが高いだけでなく、CO2の発生も避けられません。そこで、現在よりさらに高い温度で発電することで発電効率を上げることが求められています。朱研究室では、超高温での発電を可能にする装置材料の開発を行っています。具体的には、装置材料の表面に酸化に強い被膜を形成し、材料が超高温に耐えられるようにする研究を行っています。 また、次世代のエネルギー源の主役として水素が期待されています。水素を燃料とした燃焼や発電の効率は高く、副生するものが水だけで、とてもクリーンなエネルギー源です。しかし、水素をいかに効率よく製造するかが普及の鍵を握っています。朱研究室では、太陽光のエネルギーを上手に取り込む新規な光触媒を開発し、水から水素を効率よく製造する研究を行っています。「社会に役立つ研究を」―そのシンプルで真っ直ぐな理念が、チャレンジングな試みを支えています。朱研究室材料物理化学分野材料の価値を変え、社会や暮らしに影響を与える、製造プロセスの革新。高効率で省エネルギーな新しい製造方法の探索・開発にチャレンジ。製造プロセスの革新が材料の価値を変える。 1855年、パリ万国博覧会において、ひときわ人々の興味と関心を集めた展示品がありました。アルミニウム(Al)のインゴットです。「粘土から得た銀」と称されたこの希少な金属は、時の皇帝ナポレオン3世を魅了しました。出品者はフランスの科学者ドビル。1825年に世界で初めてアルミニウムの単離に成功したデンマークの物理学者エルステッドの手法を改良し、工業生産法を開発した人物です。その後、溶融塩電解法であるホール・エルー法(1886年)、およびアルミナを製造するバイヤー法(1888年)といった製造プロセスの開発により、アルミニウムの大量生産が可能になり、急速に社会に広がりました。これらの方法は、120年以上たった今も最新の製造工程で採用されています。製造プロセスの革新が材料の価値を大きく変え、私たちの暮らしや社会に多大なインパクトを与えたのです。 一方で、チタン(Ti)のように、高い比強度や優れた耐食性といった抜群の特性を持ちながら、生産性の低さ(プロセスが複雑で連続生産ができない)と製造コストの高さから、普及が限定的な材料もあります。チタンは現在も、1940年代に確立されたクロール法によって生産されており、より効率的な製造法の開発に向けて、世界中の研究者がしのぎを削っています。朱研究室では、原料であるTiO2を炭素熱還元して中間生成物(TiCxOy)をつくり、それを直接電気分解する新しい製錬法の開発に取り組んでいます。これが実用されれば、製造時間の大幅な短縮と省エネルギー化が達成され、チタンの飛躍的な普及が期待されます。『世界に一つだけのガラス実験器具』

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