東北大学 工学部 材料科学総合学科 研究室紹介
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研究室TOPICSDepartment of Materials Science and Engineering【教授】三原 毅 【准教授】 小原良和 【助教】 辻 俊宏http://www.material.tohoku.ac.jp/~hyoka/Course of Materials Processing|  今年は仙台の桜の名所、榴ヶ岡公園へお花見に出かけました。新しくメンバーに加わった学生にとっては初のゼミイベントです。前日から張り切ってお弁当、お菓子、飲み物など準備してくれました。まだ日も浅く乾杯直後は緊張ぎみでしたが、お酒がすすむにつれてすっかり打ち解けました。皆さん個性豊かな学生生活を経てここにたどり着いたらしく、これからの活躍が楽しみです。普段のゼミはカフェを少し意識した丸テーブルに集まって、アットホームな雰囲気ながらも真面目に議論します。大学で学ぶ目的は人ぞれぞれですが、ここに来た限りは「卒業研究」という学生時代最大の試練を乗り越えて、社会の荒波に柔軟に立ち向かえるような逞しさを身に着けて欲しいと願っています。24学生の研究成果をフィードバック。産業界の要請に応えられれば本物。 非破壊検査の超音波法では、検査対象に合わせて低周波(kHz 域)から高周波(10MHz以上)まで広い帯域を使用します。前者は微小な欠陥を検出することは困難ですが、散乱減衰に強いという特徴があり、後者はナノメートルオーダーの高分解能を有する一方で減衰しやすいというトレードオフがありました。現在、三原研究室がターゲットとする柱の一つは、大振幅超音波送信技術の確立。大振幅超音波と様々な計測技術を組み合わせることにより、これまで対象とされてこなかった検査体への展開や、不可能とされてきた欠陥の検出を目指しています。 三原研究室の研究・開発スタイルは、学生が基礎研究を地道に進めながら、様々のジャンルの産業界における、非破壊検査の課題や問題にアンテナを張り、進行中の基盤技術の実証先としてマッチすれば、積極的に共同研究に取り組みます。大学の研究が、社会にどう反映されるかを実感できるのは、学生を含む研究者の醍醐味であり、これらを積み重ねることで社会の安全・安心を支える本物の計測技術が創出できるのです。三原研究室材料システム計測学分野構造物の健全性を評価、壊すことなく内部を視る超音波技術。計測限界を超えるためのセンサー開発から、大振幅超音波に挑む。主役は超音波映像化技術非破壊検査技術の正念場はコンクリート? 「かんじんなことは、目に見えない(サン=テグジュペリ、フランスの作家・操縦士)」とは実に示唆に富む言葉ですが、構造物や機械部品においては、内部の目に見えない有害なきずや欠陥が、深刻な事故を引き起こすことがあります。そこで重要となるのが、検査対象を壊したり傷をつけたりすることなく内部を視る「非破壊検査」です。 原子力/火力発電機器、航空・宇宙機器といった工業部材では既に、信頼性が高く、携帯性に優れた超音波法が、構造物の欠陥寸法を2次元計測することで、強度を保証する体制が確立しています。しかし高い信頼性での検査が難しい部材も存在し、非破壊検査技術の継続的研究が求められています。 我国では、少子化・高齢化の中で、戦後一斉に建設されてきた社会インフラの老朽化が大きな社会問題になりつつあります。老朽化したインフラの全てを建て替えることが不可能な財政の中で、非破壊検査で強度が低下した部材を見つけ、限定的に補修・交換することで部材の寿命を安全に伸ばす技術であり、構造物の言わばお医者さんです。 特にコンクリート部材は、モルタル中に骨材(石)や鉄筋が混ざった検査の難しい材料で、これまでは定性的な目視検査や打音法に頼ってきました。これまで鋼構造インフラで利用されてきた定量非破壊検査が、コンクリート部材でも実現できるのか、検査技術は新しい挑戦のフェーズを迎えています。 三原研究室ではこれらの研究領域を、これまで研究・開発してきた様々の超音波技術を武器にして、こじ開け、道筋をつけようと研究を進めていきます。『研究室の一年は花見から』 『研究室の一年は花見から』

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