東北大学 工学部 材料科学総合学科 研究室紹介
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研究室TOPICSDepartment of Materials Science and Engineering【教授】安斎浩一 http://www.material.tohoku.ac.jp/dept/course/metal/anzai/index.htmlCourse of Metallurgy|安斎研のお家芸「鋳造」を通じて、 学部生向けの創造工学研修や基礎ゼミを展開する「創造工学センター(発明工房)」では、地域社会貢献の一環として、市内の小学6年生を対象とした「子ども科学キャンパス」を開催しています(市教育委員会と共催)。学生さんのレクチャーによる楽しく本格的な実験を体験してもらい、科学技術や工学に対する関心を高めてもらおうというこのイベント、数種あるテーマのなかで、「鋳物教室」の回を担当しているのが安斎研究室です。 型は、花やイルカ、星、カードゲームにちなんだ勾玉や剣など30種類以上を準備。それを基に砂型をつくってもらい、スズ・ビスマス合金を流し込めば(この過程は危険なので学生さんが担当)、オリジナルキーホルダーの出来上がり。教える立場になってわかる、指導することの難しさ。いつもと異なる視点を得られるよい機会です。8技術者の勘や経験を、コンピュータシミュレーションによって普遍化。 鋳物は、溶解させた金属原料(溶湯)を型に流し込みつくられますが、あたかも水が器の形に従うように、複雑な形状でも自由自在に造形できる点が大きな特長です。しかし、高い精度や品質を持つ製品をつくるためには、極めて高度な制御が必要になります。一方、鋳造プロセスの設計は、長らく技術者の勘や経験といった暗黙知に依存した手法が主流をなし、鋳型形状(方案)の設計や適切な溶湯温度の決定には、多くの時間と費用を必要としてきました。 安斎研究室では、個々人が所有する属人的な技を、誰もが使える“開かれた技術”にしていくため、コンピュータシミュレーションの研究開発に取り組んできました(Pick Upをご覧ください)。その一部はすでに商品化され、国内外の鋳造メーカーで導入されています。 より軽量で高強度、信頼性が高く、低コストの鋳物を―安斎研究室は、年々高まるニーズに独自の研究力で応えていきます。安斎研究室創形材料工学分野豊かな科学技術社会を支える、古くて新しい“鋳造”の技術。 精度・生産性アップ、コストダウン…多様化するニーズに研究力で応える。お茶の間から宇宙まで。暮らしや社会になくてはならない鋳物の技術。 私たちの身の回りにあるあらゆる製品は、元はといえば何かの材料からつくられています。材料は製造の過程において、“形”と“性質”が与えられ、暮らしや社会に役立つもの(素形材)になります。金属を始め、木材、石材、セラミック、ゴム、プラスチックなど、材料には多くの種類があり、それぞれの特性や個性を生かすための製造方法が生み出されてきました。中でも「鋳造法」は、溶かした金属材料を型の中に充填し凝固させることで、複雑な形状を持つ部品や部材を製造する技術で、紀元前4000年頃のメソポタミアにそのルーツを見出すことができるといわれています。 日本で生産される素形材の約半分が、鋳造法で作られる「鋳物(Casting)」です。鋳物というと、南部鉄器といった伝統工芸品をイメージする方が多いかも知れませんね。実際はそのほとんどが工業製品の重要部品として利用されています。例えば、自動車の動力源であるエンジンの生産には、鋳造法が不可欠です。環境に対する負荷を低減したりエネルギー消費を抑えたりするために、アルミニウムやマグネシウムの軽合金を用いて、大型マシンを使ったダイカスト法と呼ばれる手法でも製造されています。ロケットエンジンの主要部品(タービンブレードなど)も「鋳物」であり、高温に耐えられる超合金を用いて、精密鋳造法と呼ばれる特殊な方法で製造されています。“ものづくり”の面白さを子どもたちに伝授『鋳物教室』

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