東北大学 工学部 建築・社会環境工学科 社会基盤デザインコース/水環境デザインコース/都市システム計画コース
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教 授 河 野 達 仁(兵庫県立神戸高校)単一の学問分野に拘泥しているものは,都市の持つ複雑性を解きほぐすことはできない。そして,混沌たる都市に羅針盤を据え付けることもできない。都市はそれほどまでに複雑である。従って,都市の学問分野は研究のるつぼと言って良い。工学分野だけではなく,経済学,社会学,地理学,心理学,法学,歴史学等,有りとあらゆる分野から,切り込んでいくのが都市である。都市システム計画コースにおいて,世界最先端の理論を駆使し都市の複雑性を読み解き,表現しようとする抽象研究から,実践での経験,蓄積をもとに混沌たる都市に立ち向かう具象研究まで幅広く行われているのはこのためである。例えば抽象研究としては,「不確実性下の意思決定」「都市の理論モデル」「最適制御」といったテーマが,具象研究としては,「便益計測」,「環境政策分析」,「リサイクルシステム」,「産業・貿易システム」「公共交通システム」「都市景観」などが主なテーマである。生活の快適性向上や国際競争の中での経済成長・安定のためには,生活,生産,防災面を向上させる交通・都市基盤整備による空間創造が必要です。また,交通・都市基盤の整備や維持そして効率的利用のために,利用料金や整備財源調達をうまく設計する必要もあります。こういったハードおよびソフトの交通・都市計画を行うとき,重要な観点が多くあります。ここではそのうちの一つである集積のメリットについてみてみます。都市が大きくなるほど,多様な財・サービスが供給されます。例えば,東京や大阪には,地方ではなかなか見られない「落語やお笑いの劇,有名アーティストのコンサート,珍しいファッション,東京ディズニーランドやUSJといった無二のアミューズメント施設など」があります。また,近年のように高齢化社会では高度医療へのアクセスも重要です。高度医療には高価な機器が必要で,これらはある程度大きな都市でないと供給できません。このように大都市で多様な財が供給される背景には,大きな需要規模が高い設備費用を伴う財の供給を可能にすることがあります。ほかに,大都市の多様な産業集積が高い生産性の達成につながることや商業集積による商品のサーチコスト節約も集積のメリットです。交通・都市計画では,こういった集積のメリットの活用が望まれます。そのために,どのようなメカニズムでメリットが発生するのか,そしてそのメリットの大きさを把握する必要があります。都市システム計画コースでは,こういったメカニズムや計測の研究やその成果をもとにした都市計画手法の提案を国際レベルで行っています。このような形で都市の発展に貢献できる学問を東北大学で一緒に学び,極めませんか。都市システム計画コースでの研究活動は時に厳しく,時に柔軟である。都市システムという分野の学際性を意識し,卒業研究,修士論文,博士論文を問わず,研究室を越え合同ゼミが行われ,具象から抽象へ,抽象から具象へと,専門分野を越えた,議論が盛んに行われている。指導教員以外の教員,学生から,指導教員とは違った視点での意見が飛び交う。それは,研究を行っているものにとっては厳しい試練でもあるが,研究を柔軟に展開し,且つ,確固たる研究の位置づけを獲得する上での重要な意味を持っている。「複雑性」と「混沌」の地平集積のメリットと交通・都市計画研究紹介教員紹介Transportation and Urban Planning

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