東北大学 工学部 建築・社会環境工学科 社会基盤デザインコース/水環境デザインコース/都市システム計画コース
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88教 授 寺 田 賢二郎(鹿児島県立鶴丸高等学校)土木構造物は多様な材料からなる複雑なシステムである。例えば,数100mのコンクリート橋を想像して欲しい。100mのスケールでみれば,コンクリートの長い梁が橋脚に支えられ,岩盤・地盤の上に建っているようにみえる。10mのスケールでは,橋桁は分割されていることがわかり,1mのスケールでは,橋桁と橋脚の間には,複雑な構造があることに気づくだろう。さらに,1袢のスケールでは,コンクリートや岩盤・地盤はいろんな素材が混じった複合材料であることがわかり,1袙のスケールでは,土粒子や結晶構造もみえてくる。つまり,構造物は微視的には多様な物質から成る材料を用い,その材料を成形した構造部材を組み合わせた複雑なシステムとなっている。こう考えると,地震のような複雑な力を受けたときの構造物の挙動を理解することがいかに困難であるか,理解できるであろう。社会基盤デザインコースでは,構造物創造に関わる普遍的知識の蓄積のために,ミクロからマクロに至る10のスケールレンジの中に視点をおいて,構造解析手法や材料の力学特性について研究を行っている。これらの内容は,基礎理論から応用的なものまで多岐にわたる。また,その手法も材料や構造の室内実験,現場実験から,コンピュータを用いた数値解析,理論解析など多様である。橋梁の解析地盤の支持力解析(ひずみ分布)鉄筋のミクロ解析コンクリートのミクロ解析10 のスケールレンジ身につけましょう、社会環境を作り、        守り、維持するための真の力を。 「社会環境工学」を支えている学門体系である「土木工学」は,簡単に言えば,社会と環境を“作る”,“守る”,“維持する”ために基礎科学を駆使して理論と技術を創るための学門といえます。社会基盤デザインコースでは,形ある「もの」のなかでも橋や道路,港湾,トンネルなどの人々の生活を支える構造物(社会基盤=infrastructure)を対象として,その基礎学問を学び,先端的な研究を行っています。 私自身は,こういった目的のために,実際に起こる力学現象をコンピュータを使って解明したり,予測したりするための理論や技術に関する「計算力学」といわれる分野の研究・教育に携わっています。具体的には,社会基盤が利用される際にどのように振る舞うのか,安全に機能するのかどうか,コスト的に最も有利な(あるいは効率的な)形や材料はどのようなものか,などの様々な要件に対して,数値シミュレーションを通して答えを導くためのツール作りをしています。これを敢えて難しく言えば,「社会基盤構造物の振る舞いを表す偏微分方程式を用いて初期値・境界値問題を設定し,それをコンピュータを使って解くための方法論を構築する」となりますが,この「方法論」こそが東北大学で学ぶべき,そして研究すべき対象物です。勿論,実験に基づくアプローチなど種々の方法論がありますが,基本的に目的は同じです。 さて,今さら言うまでもなく我が国は地震大国です。これまでも地震により多くの方々の生命や財産が奪われてきました。近年では,地球温暖化が原因とされる異常気象の影響で,豪雨による洪水・家屋浸水や土砂災害に代表される自然災害は定期的に発生しており,その規模も徐々に大きくなって来ています。また,社会基盤も時間とともに劣化し,強度も低下します。そのため,適切な維持・管理を怠れば,大きな事故に繋がります。皆さん,国土を創り,保全するとともに,このような自然や事故の脅威を防ぐための方法論を一緒に構築してみませんか?研究紹介教員紹介Infrastructural Engineering

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