東北大学 大学案内 2022年度入学者用
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INTERVIEW1赤池 孝章Takaaki AKAIKE東北大学大学院医学系研究科環境医学分野 教授博士(医学)「必ず夢は叶うので、志を高く持って、何事かを成し遂げてください」学生には、いつもそう話すという赤池教授。世界的な研究開発は、基礎研究を地道に30年間続けてきたから成し遂げることができた。※東北大学大学院医学系研究科・加齢医学研究所・株式会社島津 製作所の共同研究「呼気オミックス研究センター」が設けられ、島津製作所の研究員と共同で呼気の網羅的な解析の研究が進められている。人類は酸素呼吸だけで生きているのではない、イオウ呼吸こそ必要不可欠な仕組みであると2017年に明らかにした。それならば呼気を調べればイオウ呼吸の代謝物を解析できるのではないか。こうした推察から2020年、革新的な研究開発が実現した。12Tohoku University 2022 外界から気道に侵入する病原体をヒトはどう防御しているのかという感染防御メカニズムの基礎研究を30年以上続けてきました。たとえば生体成分の一つである活性酸素は感染防御の機能がありますが、反応性が高いため自らの細胞も損傷してしまう危険性があります。実際の生体成分は、自分はことなきを得ながら病原体のみを攻撃するという選択をしているわけで、そのメカニズムを解析したいという目標を持って研究してきました。 生体成分の中で、私はイオウ代謝物に注目してきました。イオウが呼吸の仕組みに深く関わっているのではと考えていたからです。呼吸とは、細胞内のミトコンドリアの中で酸素を使ってエネルギー代謝を行うことですが、ヒトは酸素呼吸だけで生きているとずっと信じられていました。しかし酸素だけではなくイオウも使って呼吸していると2017年に私は世界で初めて明らかにしました。38億年前に地球に生命が誕生して最初にエネルギーを使った時の分子はイオウなんです。まだ酸素はなかった。その後、酸素が発生して以降すべて酸素呼吸に切り替わったとされていたが、そうではなかったということです。 そこでヒトがイオウ呼吸しているならイオウ呼吸の代謝物が呼気に出てくるのではないかと私は考えました。世界では呼気で生体情報、代謝情報が把握できるのではないかという技術開発の目標は示されていたものの、なかなか突破できずにいたところでした。2020年、新型コロナの感染拡大が契機となって、呼吸器感染を専門に研究してきた私と共同研究チーム(※)が文科省補正予算の実施事業として採択され、呼気を試料とする「呼気オミックス」による新型コロナウイルス検査法の開発に成功しました。これは、呼気の中に存在するウイルスや、生体由来のタンパク質、代謝物を解析する最先端技術です。 今後、新型コロナ対策のみならず、遠隔・在宅健康診断、各種疾病の診断・治療・未病予防などに応用することができるため、革新的な未来型呼気医療として期待されています。世界レベルの研究呼気から感染や病気を診断できる未来型医療の研究開発

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