東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 2022 GUIDEBOOK
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FUTURE ORIENTED / PICK UP14 命を育む、暮らしを豊かにする、産業を発展させる。あらゆる場面で光技術は欠かせません。紀元前から、私たちは自然界に存在する様々な物質を巧みに加工して、光を操る様々な道具を発明してきました。現代の最先端微細加工テクノロジーを使うと、自然界に存在しない人工光学物質を創り出すことが可能となり、光の常識が変わるかもしれません。 当研究室では光を自在に操るためのナノマイクロ・ロボティクス(ナノ・マイクロスケールの構造・アクチュエータ・センサに関する工学や微細加工技術)を研究することで、世の中にまだ存在しない新しい光の材料(メタマテリアル)の実現を目指しています。例えば、光は屈折によって進行方向が変わるため、レンズ、プリズム、光ファイバ等の機器に応用されていますよね。 宇宙は人々の夢をかき立てます。宇宙にはまだ誰も見たことが無い世界が広がり、そこに人類の足跡をつけていくことは、私たちにとっての大きな夢です。私がまだ小学生だった1969年、人類は月面に大きな一歩をしるしました。そしてそれは無人探査機による太陽系大航海時代へとひきつがれ、各惑星の詳細な姿が次々と明らかにされています。特に火星には、複数の探査ロボットが送り込まれ、この赤い惑星にはかつて大洋が存在したことが明らかになってきました。 私は、大学院生時代に「宇宙を探査するロボットをつくる」というテーマに出会い、その夢を追い続けています。小惑星探査機「はやぶさ」の開発に参加する機会を得て、イトカワから岩石の破片を持ち帰るという、わくわくするミッションに貢献する吉田 和哉 教授しかし、物質の屈折率は決まっているため、その範囲内でしか屈折で光を制御することができません。メタマテリアルを使って、この屈折を自由自在に操ることができれば、光学迷彩や透明マントも理論上作ることが可能です。これは単に、フィクションで描かれた技術を実現するだけでなく、皆さんの生活に欠かせないスマートフォンの電波が届かないところに電波を迂回させて届かせるとか、自動車の死角をなくすなど、安全で快適な社会を実現する、魅力的な研究につながります。 また、真夏の炎天下、自動車の車内温度が非常に高くなり危険を感じたことはありませんか?多くの熱は窓から侵入します。可視光を透過し、熱線だけを反射するメタマテリアルでガラス窓を作ることができれば、このような社会課題を解決することもできるでしょう。 更に当研究室では、バイオミメティクス(生物模倣)光学の研究も行っています。クジャクの鮮やかな羽根の色を模倣した構造色利用カラーフィルタや、蛾の眼を模倣した無反射構造を実現し、太陽電池やLEDの効率を向上させることに成功しています。エネルギー・環境問題の課題解決に寄与しています。ことができました。また、「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」という、月に無人探査ロボットを送り込む国際レースに、日本チーム「HAKUTO/ハクト」を率いて挑戦し、その夢にあと一歩のところまで迫りました。 最先端の技術を統合する航空宇宙工学は「工学の総合デパート」と言われます。プロジェクトに参画するメンバーは、自身の専門を探究し、求められる要素技術を磨き上げる一方、プロジェクト全体を俯瞰し、自分の担当している分野が全体と調和し、システムとして機能しているかを判断するスタンスも要求されます。「雷神」「ディワタ」「RISESAT」などの超小型人工衛星を大学内で開発し、宇宙空間に打上げ、大型衛星に負けない成果を挙げてきたことが、私たちの大きな自信につながっています。また、国際的な競争と協力関係も重要な原動力となっています。 宇宙は決して遠い世界ではありません。大学の研究室や、大学発のベンチャー企業が知恵を絞り、努力を続けていけば、必ず手の届く存在だということが証明されつつあります。それを実現できるのは、皆さんの若き力と情熱です。私たちと一緒に、宇宙探査の夢をかなえていきましょう!研究室紹介光学迷彩も夢じゃない光を自在に操るナノマイクロ・ロボティクス宇宙を探査するロボットをつくる金森 義明 教授

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