東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 2022 GUIDEBOOK
17/20

FUTURE ORIENTED / PICK UP16 超高齢化、大規模災害、さらにコロナ禍を通して、高効率・低コストな医療システムの構築が急務となり、遠隔セルフ医療の鍵を握るウェアラブル型および体内埋め込み型のデバイス開発が、全世界の英知を結集して進められています。リストバンド型、眼鏡型、コンタクトレンズ型・・・様々なタイプのウェアラブル端末が誕生し、日々の活動情報や健康情報のモニタリングが可能になろうとしています。一方で、埋め込み型デバイスによる投薬や生体機能の補完の研究が進み、生体と電気デバイスを融合するサイボーグ工学の進展が加速しています。 これらのバイオデバイスに共通のキーワードは、生体と人工物を接合するための「生体親和性の工学」です。金属やプラスチックは、脳・筋肉や皮膚などの生体組織に比べるとケタ違 東北大学工学部機械知能・航空工学科は、日本一の機械工学科として更なる教育研究の質の向上に努め、国際的なトップクラスの教育研究拠点を目指しています。世界中の優秀な留学生向けの国際機械工学コースIMACが2011年10月に開設されてから12年目になりました。IMAC(International Mechanical and Aerospace Engineering Course)は、日本で初めての秋期入学の学部からの英語での工学系学位コースであり、学士(IMAC-U)から修士課程・博士課程(IMAC-G)まで一貫した人材育成を行っています。IMACの教育・研究の質の高さ、アドバンテージの背景となっているのが、本学科の大規模かつ多彩な学問領域(100を超える研究室)と、世界に西澤 松彦 教授いに硬くて一体化が困難です。また、水分が苦手な電子デバイスに対して、生体はイオン駆動のウェットシステムです。このような物質の差異「ハード↔ソフト、ドライ↔ウェット」、およびメカニズムの差異「電子駆動↔イオン駆動・分子駆動」を解消する生体親和性の工学が、生体と人工デバイスを構造的・機能的に無理なく融合するために必要なのです。 我々の研究室では、柔らかいウェットな有機材料を使って、生体に馴染むバイオデバイスを開発しています。例えば、ハイドロゲルで造る脳波電極は、70%以上が水分なので、しっとりと脳の表面に貼り付き、従来品(シリコーンゴム製)のように脳を圧迫する心配がありません。酵素を利用して造るバイオ電池の開発も進めています。皮膚に貼り付けるパッチ型のバイオ電池は、糖分と酸素から発電し、皮膚にイオンの流れを生み出して、傷の治りを速めたり、薬や美容成分の浸透を促進する効果を示しました。このような生体親和性に優れるバイオデバイスの実現を更に充実させて、遠隔セルフ医療が行き渡った安心で健康なスマート社会の実現に貢献したいと考えています。向けて先駆的研究を発信しつつ、教育のグローバル化に情熱を持つ教授陣です。学生は高水準の教育と研究を世界標準言語である英語で受けながら、日本語や日本文化にも親しみを感じることができます。IMACはこれまで留学生を対象としてきましたが、2017年度から日本人学生を対象としたグローバル入試を導入し、英語での工学教育を基盤とした国際共修環境において将来、世界のリーダーとして活躍する研究者あるいは技術者を育成しています。グローバル入試は、主に大学入学共通テストを受験したうえ英語で学びたい日本人高校生に加えて、海外高校、国際バカロレア認定校、インターナショナルスクールで学んだ日本人高校生を対象としており、大学入学後には留学生と共に日本語コースと同一の内容の授業を英語で受けることになります。ここでの異文化交流は、多様な価値観、国際感覚・センス、広い視野など、グローバル人材に必要とされる多くの教養と知識を育んでくれることでしょう。自身の新しい可能性と出会い、国際人としての能力を磨き鍛え、世界という大舞台で先導的な役割を果たしてほしいと願っています。研究室紹介生体親和性を追求してスマート医療デバイスを生み出す英語で学び探究する機械工学。世界を舞台に輝くために陳 迎 教授

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る