東北大学 工学部 材料科学総合学科 研究室紹介
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水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を得る燃料電池は、水だけを排出するクリーンな発電装置です。現在、その化学反応を促すための触媒にレアメタルの白金が使われていますが、その使用量を減らす、さらに進めて全く使わない触媒の開発が水素社会構築の鍵を握っています。触媒の化学反応は材料の表面で起こります。どのような表面が高性能なのか、「表面の科学」という視点から、より良い「触媒材料」づくりを進めています。成田史生教授と栗田大樹助教の研究グループは、植物繊維をナノレベルに解繊したセルロースナノファイバー(CNF)と蚕糸からなる複合糸の創製に成功、蚕糸単独の場合よりも2倍以上の縦弾性係数が得られ、引張強さや比強度も同様に増大しました。東京オリンピック2020の開会式でUAE選手団が身に着けていたシルクスカーフは、 成田研究室が参画する、CNF蚕糸の研究開発を通じて、日本・UAE両国の友好の深化とシルク産業の復興を目指す「UAE-NIPPON友好シルクプロジェクト」で、日本とドバイ日本人学校の小学生が育てた蚕から製作したものです。いま、植物由来のCNFは新素材として注目され、強化材としての利用が検討されています。 CNFを食べた蚕でもっと細くて強いグリーンコンポジットファイバーを創り出し、 ナイロンやポリエステルなどの石油を原料とした合成繊維にとって変わる糸で製品を作り出すことを目指し、研究が進められています。Insider tip環境材料表面科学教授/和田山智正 准教授/轟直人一方向植物ナノファイバー強化蚕糸の創製東京オリンピック2020のUAE選手団のシルクスカーフ水素社会構築を「表面の科学」が後押し

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