東北大学 文学部 学部案内 2024年度入学者用
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MessageTohoku University, Faculty Of Arts And Letters 20249 文学部にいると、往々にして「何か役に立つのか?」という問いを受けます。これに対して、私は大体二つの答えを思い浮かべて、返答したり、適当にごまかしたりしています。 第一の答えは「思いのほか文学部は役に立つ」です。社会科学を中心に社会問題の解決に向けた取組みは解り易く「役に立つ」ものでしょうし、哲学や宗教学の知見は我々が失恋・病・死などの人生の苦境に何かヒントを与えてくれるかもしれません。また我々が言葉で意思疎通し、時に言葉を使って世界を認識していることを考えれば、我々にとってかなり根源的なものとして文学部の知見はありそうです。 一方、第二の答えは「役に立たないが、そもそもその前提を壊せるのが文学部」です。考えてみれば何かが「役に立つ/役に立たない」という評価や、更には現在「正しい」「本質的」とされるものは時代や場所を超えて普遍的ではありません。そういった既存の価値観に疑いの目を向けたとき、そこに内在する社会的な構造や虚構性、言説の語り手の欲望に気づいてしまうこともあるでしょう。それは、時に自らにとって親しく心地いい物語を破壊する苦しい作業となるかもしれません。しかし、そこに快楽を見出しうるのも、また文学部の魅力なのだと私は思っています。 東北大学文学部の魅力は、なんといっても26もの学問分野を自由闊達に学べることではないでしょうか。「人間とは何か」という根源的な問いに対しても、現代社会の課題に向き合うにも、専門分野を持ちつつそれを超えた広い視野を持つことが重要です。私が専門とする文化人類学を例に挙げると、「人間とは何か」という問いを文化という側面から研究するために、あえて異文化に身を置きます。国外にせよ、国内にせよ自分が生まれ育った場所あるいは馴染みのある場所から遠く離れた地域を選ぶことが多いです。異文化の研究に際して、その地の歴史や言語、宗教や社会、思想や心理、美術などを総動員します。その地を丸ごと理解しようとする過程で、異文化であっても実は自分たちと同じことをしていることに気づくかもしれません。そこで自文化とはなんだろうか、と考えるのです。このように、一つの専門分野を学ぶうちに必要になる多数の分野をこの文学部で学ぶことができるし、留学先でさらに視野を広げることもできます。大学自体が、皆さんにとって異文化の入り口です。好奇心、知りたいと思う心を持って、踏み込んでみてください。Message from Teacher教員メッセージ文化人類学専修現代日本学専修越智 郁乃 准教授茂木 謙之介 准教授

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