教員から法理学を通して深く考える力を身に付けるるるる学生に寄り添った授業を心掛けるかばしま ひろし専門分野/法理学いまづ あやこ専門分野/民事訴訟法10民事訴訟法は、民事の事件に対して主に裁判や執行の手続、その前提となる保全の手続などを扱う法律です。2020年には民事執行法が改正され、子どもの引渡しに関する手続が新たに定められたため、最近はそちらの研究も進めています。民法・刑法と比べ、民事訴訟法は学生にとってイメージしづらい科目かもしれません。しかし、手続と一言でいっても幅広い分野があり、他の法律にないような概念や学説、判例があります。手続上でも、法律を機械的に適用するわけではなく、ケースによってさまざまな概念が入ってくることもあります。人々の争いの中でバランスを考えることは正解がなく、どこまでも終わりがないところが難しさであり、面白いところだと思います。指導教官の影響で研究者の道へ私は学生時代、周りの影響でロースクールに進学し、民事訴訟法のゼミに入ったことが現職につながっています。ロースクールは基本的には実務家を目指す方が進学しますが、指導教官から研究者の道もあることを教えていただきました。一つのことを突き詰めて考えるのも面白いと思って研究者の道に進みましたが、今となっては自分に合っていたと思います。授業では、学生時代のことを思い出し、自分も分かりづらかった部分は丁寧に伝えるよ東北大学法学部の学生は、とてもまじめに勉強に取り組んでいて、私もとても感心しています。コロナ禍でのオンライン授業にもすぐに対応していましたし、対面授業と比べてメールやインターネット上のほうが気軽に質問できていたのではないかと思います。法学部では、法律を勉強することを通じて、理論的な考え方が身に付くと思います。今はスマホやパソコンで文字を打つことが多く、紙に字を書いたり、本を読んだりすることが少なくなってきていると思いますが、法律を扱う仕事に就くかどうかにかかわらず、どの分野でも文字を読んで理解し、自分の言葉にする力は必要になってくるので、法学部を目指す皆さんにも文字を読み書きする力を養ってほしいと思います。うにするなど、学生に寄り添う対応をしたいと心掛けています。法律を学ぶことで理論的な考え方が身に付く正解のない問題を考え続ける面白さ法理学とはどんな学問か法理学とは、法の一般理論、正義論、法律学方法論からなる、基本的には法のメカニズムを明らかにする学問です。例えば、近年東京電力福島第一原子力発電所事故の裁判が社会的に大きな注目を集めましたが、特に多くの被害者の方がいらっしゃる状況で法が社会的にどのような役割を果たしているのか、どんな問題点があるのかなど法の役割や機能を考えるのが法の一般理論です。また、その原発事故の影響で起こった様々な事件を、法的にどのように分析するのか示すのが法律学方法論であり、法律家として基礎となる分野になります。正義論では、「法が成立する可能性の条件」について研究しています。難しい研究への挑戦特に、法と時間の関係について研究することに非常に面白さを感じています。例えば、一般的にルールは未来に向かって設定されていますが、この時間を見直すとします。未来というのはいまだなく過去もすでにない、そう考えると実際に時間があるのは今であり、今は永遠という構造を持っていると考えられます。すると、永遠がルールの基礎になると考えられるのではないかということを研究しています。専門家しか分からない非常に難しい問題に取り組んでいるという感覚があり、この学問の魅力につながっていると思います。法理学を通して学んでほしいこと皆さんにとって法理学はあまり馴染みがなく、将来的にも仕事に直結する学問ではないかもしれません。しかし、私は学生たちに「役に立つか、立たないかという基準でものを見ないでほしい」と伝えています。もし、今の生活が一変するような事態に陥ったとき、役に立つのは本当に深く考えて行動に移す力です。学生たちには法理学を通してその力を養ってほしいと思います。法学部には真面目で賢い学生が多いと感じていますが、自分の殻を破って、大きなスケールで考えるのもいいと思います。法という社会のルールは歴史的に形成されるものでさまざまな要因が関わっており、経済学や歴史学の研究も必要になります。広い視野を持って、堅実さとさまざまな問題を突破できる力を持った人になってほしいと思います。樺島 博志 教授今津 綾子 准教授Message
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