東北大学 法学部 学部案内 2024
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教員から■過去“を学び、■今“を生きる力に変える知的好奇心を刺激する法律の世界へくわむら ゆみこ専門分野/労働法ふしみ たけと専門分野/日本政治外交史TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL OF LAW 202411私が担当している「日本政治外交史」とは、明治維新から戦後の改革を経て現代にいたるまでの日本の政治と外交がどのように展開されてきたのか、それらの経緯や特徴を歴史的に分析する学問です。例えば、日本という国家がどのように形成されてきたのか、そしてどういう特徴があるのかを、社会の動きや要因を抽出して分析する手法を身に付けられる講義を行っています。このような過去の話は、遠い出来事のように思うかもしれません。しかし、当時の資料を内在的に読み、自分が同時代に生きていたらどのような選択をしただろうかと考えると、身近で等身大の出来事に感じられるのではないでしょうか。膨大な資料を読み解き、バランスよく議論を組み立てるのは難しさもありますが、大きな魅力でもあります。政治や行政、そして法律の世界へ旅立つ法学部の学生たちには、これらの分析を通して実際の現場における判断の参考にしてほしいと思います。学生同士が助け合う環境東北大学には東北6県を中心に全国から学生が集まるため、地元を離れて暮らす人々が多く、慣れない生活を送る後輩を先輩がサポートするネットワークがあります。私は東北大学が最初の赴任校でしたが、新米教師の私を当時の学生たちが助けてくれたことは良い思い出であり、今でも彼らとは交流があります。法学部の学生は真面目で心が温かい学生が多く、この4年間でぐんぐん成長していくのを目の当たりにするのは感慨深いですし、私も彼らとともに大いに勉強させてもらっています。好きなことを突き詰めると道が開ける法学部はとても優秀な学生が多く、難しい法律学や政治学をしっかりと学んでいます。その根底には、より良い社会を目指そうとする正義感があると感じています。それぞれの価値観から社会の在り方について議論し、考えることで成長につながると思います。私は大学で学んだ日本政治外交史が面白く、もっと知りたい、もっと勉強してみたいという思いから研究者になりました。自分が好きなことを突き詰めると、次の分野につながったり、大切な友人や先生と出会えたりして、新たな道が拓けると思います。東北大学法学部は魅力的な教職員や学生たちが集まっていて、交流しながら成長できる場です。ぜひ一緒に学びましょう。労働法とは特に立場が弱いとされる労働者のための法律をまとめた法分野で、その中でも労働者が集団となってより良い労働条件を使用者と交渉する労働組合法を中心に研究しています。日本は歴史的に使用者側が強く、労働者側が良い条件を勝ち取っていくのが難しい現実があります。どこまで法律で保護して、どこまで交渉に委ねるかを個別に考える必要がありますが、集団的自治という理念を押し通すだけではなく、労働者自身が勝ち取っていくべき権利の調整を図っていくことが魅力だと思います。2年間ドイツに留学しましたが、暗黙の前提や社会的な実態を踏まえて制度ができていることや、現地の人の考え方など、本を読むだけでは分からないことを学ぶことができました。留学の経験は私にとって大きいものでしたね。日本は海外の影響を受けて法が作られたという経緯があり、海外の動向との比較法で研究されることがほとんどです。しかし、すぐに海外と同じようにやるべきと考えるのではなく、社会の実態を踏まえた上で法律を考えていかないと、本当の労働者の保護にはなりません。日本として独自の道を歩んでいくための答えはひとつではなく、それを考えていくのはとても興味深いと思います。曖昧だから面白い学問としての魅力労働法は身近に感じやすい分野だと思いますが、できるだけ具体例を出して対処法を考えるなど、学生がイメージしやすいように工夫しています。学生に対しても、どんなことに疑問を持っているのか、何に悩んでいるか、できる限り話を聞くように心掛けています。日本は法治国家であり、問題があればまずは法律を確認することが必要です。社会の仕組みや法律のあり方を学ぶことは生きていく中で大切なことであり、法律の枠組みの中で説明できる力を身に付けるのが法学部だと思います。また、法には絶対的な答えはなく、さまざまな選択肢からより良い方を見つけていくという曖昧さが、学問として面白いと思いますし、さまざまな分野に応用することができると思います。ぜひ興味を持っていただければうれしいです。過去を自分事として捉えるより深く学ぶことで知的好奇心を刺激される海外と比較して考える日本の労働法桑村 裕美子 教授伏見 岳人 教授Message

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