東北大学 理学部 地球科学系
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NaturaHazardResearchGroupl 自然災害学グループ15 日本には数多くの古文書が残されており、過去の津波や地震などの自然災害について克明に記録されている場合があります。しかし、古文書記録ではわからないこと(例えば津波の浸水範囲など)もあります。また、先史時代の津波については古文書が存在しないために歴史学的に調べることができません。一方、津波により運ばれた土砂は陸上に堆積し、地層中に津波堆積物として記録されます。私たちは、津波堆積物を各地で調査し、歴史・先史時代の津波の履歴と規模を推定する研究を実施しています。そして、津波■上計算や土砂移動計算などを組み合わせて、過去の津波の規模の定量復元を目指しています(図2)。2011年東北地方太平洋沖地震津波を受け、現在は西暦869年貞観津波など東北地方太平洋岸を襲った過去の津波の規模の再評価を国際共同研究として行っています。また、南海トラフや琉球海溝などにおいても現地調査を実施中です。 現在、地球の上空には、合成開口レーダ(SAR)と呼ばれる高分解能のレーダーを搭載した地球観測衛星がいくつも周回しており、昼夜や天気を問わず観測をしています。干渉SAR(InSAR)と呼ばれる解析手法を用いると、別の時期に撮像されたSAR画像から、その間に生じた地形の変化を抽出することができます。私たちは、抽出された変化を現地での断層調査結果などとも突き合わせながら、地震時の活断層の動きを詳細にしらべることにより、地震の発生メカニズムの研究を進めています(図3)。また、活断層周囲の変形計測による内陸地震のハザード評価手法の研究や、InSARで見える地すべり・地盤沈下などの研究も行っています。図2 2011年東北地方太平洋沖地震津波の数値シミュレーション(地震発生から3時間後までの最高水位)。巨大な津波が岩手・宮城・福島沿岸に襲来した状況が再現されている。図3  InSARで捉えられた2016年12月28日に■城県北部で発生した地震による地形の変形。Google Earthの地形に重ねて表示してある。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のだいち2号(ALOS-2)衛星のデータの解析による。色の変化が衛星と地面の距離変化を表しており、地表に出現した断層(色の急変部)の南側で、衛星から遠ざかる方向の変動が捉えられている。[ Webでもチェック! ]https://irides.tohoku.ac.jp/過去の津波の履歴と規模を明らかにする地形の変動を計測して地震の発生メカニズムを探る

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