東北大学 理学部 地球科学系
16/32

16 「鉱物」は、地球科学の研究分野において最小構成単位として取り扱われています。また、1種類以上の鉱物の集合体が「岩石」と定義されるので、固体地球は、ほぼ岩石で構成されることになります。固体地球表層や内部で見られるさまざまな事象は、岩石、ひいては岩石を構成する鉱物の何かしらの変化に基づいて起こります。そのため、例えば、岩石中に含まれる鉱物が、どのような環境でどのように形成され成長するのか、あるいは、多種多様な環境でどのように変化するのかを知ることは、地球だけでなく、他の惑星に関する情報を知る手がかりになります。 地球上には、5000種を超える鉱物が存在し、現在でも毎年、新たな鉱物種が発見されています。鉱物種は、構成される元素(化学組成)とそれらの構成元素がどのように規則正しく配列するか(結晶構造)という2つの要素で決まります。同じ化学組成でも生成あるいは存在する環境の違いで結晶構造が異なり、別の鉱物となる場合もあります。このような関係にある鉱物は「多形」と呼ばれ、多くの鉱物に観察されています。特に、地球深部にある地震波不連続面の存在を物質科学的に説明する際の重要な■になっています。 一方、天然鉱物では、理想的な化学組成を取ることは非常に稀です。結晶構造には、ある程度の許容性があるので、同じ鉱准教授 栗林 貴弘 / 准教授 長瀬 敏郎*1*1 総合学術博物館物であっても、化学組成は一定の範囲内で異なるものが存在します。液体のような振る舞いに例えられて、「固溶体」と呼ばれます。固溶体をなす鉱物では、組成変化に合わせて、さまざまな性質が連続的に変化します。この特徴は、非常に重要で、鉱物の本来もつ性質を大きく変えてしまうほどの影響力がある場合があります。関連分野である材料・物質科学分野では、この性質を利用して、人々の生活に役に立つ物質を探し、活用することを目指しています。鉱物学的な研究課題としては、古くから「光学異常」として知られる現象であり、最近のわれわれの研究から鉱物の成長過程と密接な関係があることが、明らかになってきています。 基本構成単位とされる小さな鉱物ですが、その生い立ち(成長履歴)を保存しているものがあり、そこには決められた制約の中でも多様性が観察され、一つ一つの鉱物は、個性を出しています。その成長履歴を知ることは鉱物を知ることでもありますが、鉱物は地球がつくる作品と考えると、鉱物ができる環境を地球がどう用意したのかという地球の歴史を知ることにつながります。そう、鉱物を知ることは、マクロな地球や惑星の■を解くカギになるのです。 ミクロな鉱物を通して、マクロな自然の不思議、科学の楽しさを一緒に学んでみませんか。Mineral Research Group地球科学におけるマクロとミクロな現象をつなぐ鉱物の■を解く〜鉱物の多様性と鉱物結晶の規則性〜鉱物学グループ

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る