東北大学 理学部 地球科学系
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教授 中村 智樹 / 講師 中嶋 大輔 / 助教 松本 恵 我々の太陽系は、いつ、どこで、どのようにして、誕生したのでしょうか。現存する始源惑星物質(小惑星起源隕石、彗星起源惑星間塵、探査機リターンサンプル)に残された物質情報に基づき、多角度からの実験的手法で分析実験および再現実験を行い、太陽系の起源と初期進化過程の■の解明を目指すことが、私たち初期太陽系進化学研究分野の目的です。 太陽系は約45.7億年前に誕生し、それから数千万年の間に、宇宙の塵が集まって小さな天体ができ、それらが衝突合体を繰り返して原始惑星が形成され、さらに現在の惑星に進化したと考えられています。このようなダイナミックな太陽系の初期進化過程は、太陽系誕生時にできた小さな天体にしか記録が残っていません。小惑星や彗星といった太陽系小天体は、その太陽系誕生の■を秘めた天体です。 特に、太陽系小天体の中でも、現在の小惑星帯の中心以遠に存在する水(氷)を含む微小天体の形成進化に、興味を持っています。これらの天体は原始太陽系星雲に最も普遍的に存在し、現在の木星型惑星の原材料になった天体です。現在では、小惑星帯の中心から外側のC、P、D型小惑星や海王星以遠のカイパーベルト天体(短周期彗星)として、一部の微小天体が太陽系内に残っています。 私たちの研究室では、これら太陽系小天体の物質を、小惑星起源隕石、彗星起源惑星間塵、探査機リターンサンプル(スターダスト、はやぶさ探査機、はやぶさ2探査機の回収試料)として手に入れ、物質科学的研究(鉱物学的、同位体宇宙化学的、希ガス組成など)を行っています。これらの結果をもとに、今から46億年前の原始太陽系星雲内で、どのような微粒子がどのようなプロセスで太陽系初の天体である微小天体を形成し、その微小天体内部でどのような物質進化が起こって原始惑星、さらには現在の惑星に進化したかを明らかにしようとしています。2021年6月から1年をかけて、はやぶさ2探査機によって回収された小惑星リュウグウの試料の初期分析を世界中の研究者と協力して行っています。 この数年で、太陽系の科学は大きな転換点を迎えました。今までは天体望遠鏡で観測するしかなかった天体の物質を、今後は探査機により地球に持ち帰ることができます。私たちや次世代の科学者がその物質を研究し、より精密な惑星形成のシナリオが明らかにされていくと考えています。図1 太陽系形成の標準モデル。約46億年前の太陽系形成期、惑星になり損ねた小惑星やカイパーベルト天体(短周期彗星)といった太陽系小天体に、太陽系の起源と初期進化過程の記録が残されています。Early Solar System Evolution Research Group20■■■■■■■■45.7■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■始源惑星物質から読み解く、46億年昔の太陽系の起源と進化の■■■■■初期太陽系進化学グループ

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