教授 ■森 樹*1/ 准教授 平野 直人*1/ 助教 後藤 章夫*1/ 助教 宮本 毅*1/ 助教 パストルガラン ダニエル*2*1 東北アジア研究センター *2 学際科学フロンティア研究所 [クロスアポイント:グラナダ大学] 私たちが住むこの地球は6,400kmの半径を持っていますが、実際に人類が掘削できた深さはわずか10kmで、その内部を直接見ることはほぼ不可能です。しかしプレート沈み込み帯では、深さ数十kmから150kmの地下にあった岩石が時間をかけて広域的に上昇して地表に露出することがあり、地下深部の情報を直接的または間接的に読み解くことができます。水を含んだ海洋プレートが大陸の下に潜り込んで生ずるプレート沈み込み帯は地震・火山活動や地殻変動を理解する■となるだけでなく、全地球規模の元素循環を明らかにする上でも有用な研究対象です。とりわけ、プレート沈み込み帯の深部にあった岩石(高圧・超高圧変成岩)は複雑に変形・再結晶し、その起源と成因はさまざまですが、多様性のなかにプレート境界に共通した大規模な地質現象の一般則を記録しています。さらにプレート沈み込み帯で形成される岩石の特徴は、地球形成以来の地球内部の冷却をも反映しています。 我々は過去にプレート沈み込み帯や海嶺、ホットスポット火山(海洋島)やプチスポット火山などで形成された世界各地の地質と岩石・鉱物が記録した情報を直接解析し、過去のプレート境界で起きた元素移動の実像と時空間スケール、さらに地球史を通したそれらの変遷を読み解くことで、固体地球の化学進化とその表層環境への影響の総合理解を目指しています。地球内部で起こってきた壮大な現象を捉えるために、大規模な造山帯の構造から岩石・鉱物のナノメートル組織に至るまで、マルチスケールな解析に取り組んでいます。世界の造山帯に露出するさまざまな時代のプレート境界の岩石を調べ、当時の沈み込み帯を復元することで、地球表層環境を含めた地球のダイナミックな変遷を読み解くことができます。図1 島弧−海溝系の概念図とプレート沈み込み帯の特異な温度構造。 プレート沈み込み帯や大陸衝突帯の深部の高圧・超高圧変成作用は、マグマ活動などと比較してその形成プロセスの時間スケールが大きいことが知られています。また、プレート収束境界では高圧・超高圧変成岩(青色片岩やエクロジャイトなど)が大きな岩体や広域変成帯として地殻の浅所まで上昇して造山帯の一部を構成するように、移動の空間スケールも大きいことが知られています。一般に、高圧・超高圧条件下での岩石の再結晶は不完全なものが多く、その不完全さに着目することで変成岩に記録された温度圧力履歴、つまり、プレート境界の物質移動の様子を読み解くことが可能です。現在進行形の高圧・超高圧変成作用の現場を直接見ることはできませんが、造山帯に目を向ければ沈み込み帯深部の情報を古原生代までの過去に■って得ることが可能です。我々はさまざまな時代の高圧・超高圧変成岩が記録した情報(鉱物組成共生関係、元素・同位体組成、構造・組織)を解析し、プレート収束域における種々のプロセスの実像と時空間スケール、さらに地球史を通したそれらの変遷を読み解くことで、固体地球の巨視的な化学進化とその表層環境への影響の総合理解を目指しています。 海洋プレートのリソスフェア・アセノスフェア境界の実像を知ることは固体地球科学の重要なミッションです。海洋プレートが沈み込む際に屈曲してできる海洋プレートの地形的な高まり(アウターライズ)の周辺にはプチスポット火山とよばれる海底火山が噴出します。我々はそれらの噴出活動と玄武岩溶岩が記録した情報(岩石組織、元素・同位体組成)の解析から海洋プレートの構造、とりわけ海洋プレート基底部や、その進化過程の解明を目指しています。Petrotectonics Research Group26造山帯や海洋底の岩石から固体地球の進化と全地球規模の元素循環を理解したい1. 高圧・超高圧変成岩と地殻進化の研究2. 海洋底と海底火山の研究 地殻化学グループ
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