東北大学 理学部 地球科学系
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Gobal l CrystaScienceGroupl グローバル結晶科学グループ29図4 ミクロ・ナノ領域の観察・分析のための試料加工の様子。左:イオンビームで局所領域を切削加工する集束イオンビーム装置、中央:同装置で加工され、試料支持膜へ転写された厚さ0.1μmの薄膜、右:薄膜試料の透過電子顕微鏡像と結晶回折像、組成スペクトルの例。 長年力を入れている研究対象の一つにダイヤモンドがあります。ダイヤモンドは高温高圧下で安定な炭素の結晶で最も硬い物質です。地球上では、深部マントルからマグマによって運ばれてきたものや、大陸衝突によって地表に露出した超高圧変成岩中に含まれるもの、巨大隕石の衝突によって地表の炭素が変化して生じたものなど、様々な特徴を持ったダイヤモンドが産出します。特に、マントル深部に由来するダイヤモンドはその起源と成因が良く分かっていません。地球深部に存在すると考えられる還元的な流体との関係や炭素の起源に関する研究を行っています。また、最近日本では初めてとなる変成岩由来のマイクロ・ナノダイヤモンドを発見し、その起源と成因を追跡しています。一方、隕石衝突によって形成される“ 衝突ダイヤモンド”の生成機構を考える上でも重要な、グラファイト(黒鉛)→ダイヤモンドの直接相転移のメカニズムについても天然試料と合成実験の両面から調べています。 工学系の研究者の方や民間企業との共同研究を通して、鉱物学・結晶学の知識やノウハウ、研究手法が、純粋地球科学だけでなく、材料科学や環境科学、農学など様々な分野へも活用でき、そのニーズは想像以上に多いということを実感しています。例えば、火力発電で石炭を燃やした際に生じるフライアッシュ(石炭灰)は稲作用の肥料(無機肥料)として有効活用されていますが、高温焼成によって得られる同肥料はケイ酸塩鉱物からなるセラミクスといえます。これがどのようなプロセスで反応・結晶化し、土壌中でどのように溶出してゆくかを調べるには鉱物・結晶学の知見と手法が不可欠です。このように、これまでまだ取り組まれていないような新たな応用研究にも積極的に取り組んでいます。図2 左上:マントル由来の様々なダイヤモンド、右上:ダイヤモンド中に含まれるマントル鉱物の包有物、左下:日本で初めて変成岩中から見つかったマイクロダイヤモンド、右下:ロシアのPopigaiクレーターより初めて発見された天然ナノ多結晶ダイヤモンド(透過電子顕微鏡写真)図3 稲作用の優れた無機肥料としてフライアッシュ原料よりつくられる「けい酸加里」(開発肥料株式会社製造販売)。ケイ酸塩鉱物が岩石様の組織つくっています。ダイヤモンドの起源と成因応用研究

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