GeoogyandPaeoceanographyResearchGroup l l 地質・古海洋グループ07図1 フランス・プロバンス地方にみられるOAE1aの地層教授 髙嶋 礼詩*1/ 准教授 黒柳 あずみ*1 白亜紀は地球史で最も温暖化した時代の一つで、とりわけその中期には、短期間(数10万年間)の急激な温暖化が何度か発生しました。この時期には海洋に無酸素環境が拡大し、海洋生物の多くが絶滅したため、海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Events: OAEs)と呼ばれています。白亜紀の海洋無酸素事変の主なものとしては、OAE1a(1億2000万年前)、 OAE1b(1億1200万年前付近)、 OAE2(9400万年前)などがあり、この中でもOAE2は最も大規模で、このイベントを境に魚竜が地球上から姿を消しました。本研究室では、日本、フランス、アメリカ西海岸、イタリア、深海コアなどの地層を対象に、海洋無酸素事変時期に堆積した地層の化学分析や化石の群集解析を行い、その発生原因と発達・終焉のプロセスを明らかにする研究を行っています。 過去の海洋環境を調べる方法の1つに、有孔虫という炭酸塩の殻を持つ生物を使う手段があります。浮遊性有孔虫は、海洋表層に生息する単細胞のプランクトンで、生息時の海洋の水温やpHなどをその殻に記録しています。私たちのグループでは、過去や未来の海洋環境をより精密かつ正確に推定することを目標に、有孔虫の分析や飼育実験などを行っています。また、近年の人為起源による大気の二酸化炭素濃度上昇に伴う海洋酸性化は、有孔虫やサンゴなどの、海洋に生息する石灰化生物に多大な影響を与えることが懸念されているため、有孔虫の石灰化への影響についての研究も行っています。*1 総合学術博物館図2 仙台市に広く露出する広瀬川凝灰岩図3 浮遊性有孔虫の飼育実験 火山灰を用いた地層の対比は、第四紀の研究において多様な分野で応用されています。しかし、火山灰は続成作用や風化に脆弱であるため、容易にその化学組成や形態が変質する欠点があります。これに対して、私たちのグループでは、埋没続成や風化に極めて強い耐性がある燐灰石を用いることにより、古い時代の火山灰でも対比を可能としました。 現在、紀伊半島の中期中新世カルデラ群や東北地方の後期中新世〜鮮新世のカルデラ群の火砕流堆積物―火山灰の対比、北海道の白亜紀の火山灰の対比などの研究を行っています。Geology and Paleoceanography Research Group白亜紀の古環境変動の研究:海洋無酸素事変有孔虫を用いた過去および 未来の海洋環境推定燐灰石微量元素組成を用いた 火山灰・火砕流堆積物の対比地質・古海洋グループ
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