東北大学材料科学総合学科博士課程2年、GP-Spin program(スピントロニクス国際共同大学院プログラム)博士課程学生。パデュー大学にて材料工学の学士号を、グルノーブル工科大学とダルムシュタット工科大学にて材料科学の修士号を取得。現在、新田研究室に在籍、「Pt/Co二層膜構造におけるスピン軌道トルク」を研究している。 東北大学は2017年6月に文部科学大臣から「指定国立大学法人」に指定されました。指定国立大学とは、世界最高水準の教育研究活動ができる実力と潜在能力が見込まれた大学のことで、日本に限らず、国際社会や世界経済の発展に大きく貢献することが期待されています。その中でも東北大学は、研究面で「材料科学」、「スピントロニクス」、「未来型医療」等が高く評価されており、材料科学総合学科がまさに中心的役割を担っています。同時に、国際通用性の高い先進的な教育プログラムを深化・発展させ世界を舞台に活躍する若手リーダーの育成に力をいれています。 さらに、2021年3月には、内閣府の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」において、マテリアル(材料)に関するイノベーションを国として推進していくことが発表されました(マテリアル革新力強化戦略)。これは、AI、バイオ、量子といった先端技術の強化、SDGsやパリ協定の長期目標の達成、資源・環境問題の克服、安全・安心社会や健康長寿社会の実現といった社会課題の解決にとって、マテリアルの革新が極めて重要であることを受けたもので、日本を代表する材料の教育研究拠点である東北大学材料科学総合学科の貢献が未来社会の創造に向け高く期待されています。東北大学 大学院工学研究科 材料システム工学専攻および高等研究機構新領域創成部 教授2007年3月東北大学大学院工学研究科工学専攻 博士課程後期3年の課程 修了。博士(工学)。2023年から東北大学大学院工学研究科 材料システム工学専攻 教授。2013年より米国ロスアラモス国立研究所から複数回招聘。欧米の大学・研究所・企業を中心に国際共同研究を展開。2020年12月より国際アカデミア組織「Academia NDT International」の正会員。2021年2月より科学技術振興機構 創発的研究支援事業 研究代表者。 日本の材料産業は、汎用品から機能性製品に至るまで様々な企業が国内に存在し、機能性材料では世界的に高いシェアを確保するなど日本のモノづくりの源泉となっています。もちろん基礎研究においてもノーベル賞受賞に繋がった青色発光ダイオードやリチウムイオン電池の開発などは革新的な材料を生み出すことで実現されたものばかりです。言ってみれば、世の中に存在しなかった材料を創ることができれば社会を変えられる、それが材料研究の最大の魅力です。 このように日本は材料研究において長年世界を牽引してきており、その強みを内閣府も後押しすることで、AI・ロボット・ロケット・量子コンピューターなど未来社会の科学技術に欠かせない材料研究を東北大学材料科学総合学科が拠点となって進めています。東北大学は材料科学の分野で世界を牽引する存在です。特にスピントロニクスに関して、新田教授の研究室は最も優れた研究施設の一つだと言えるでしょう。また、研究に対する考え方にも魅力を感じています。もちろん東北大は理論研究において高い水準を維持していますが、実践的な研究にも非常に重点を置いています。例えば、学部課程の4年生でも自由に研究室に入り、高度な実験装置や豊富な材料を使って研究を行うことができるようになっています。これは、東北大学の伝統として非常にユニークなところで、自分が米国やヨーロッパで学んでいたときの体験とは大きく違います。このような環境は、実践的に研究を深めていきたい学生にとっては非常に有益です。私が専門とする「非磁性Pt/強磁性Co二層構造」の研究は、現在のコンピューターメモリシステムに革新をもたらす大きな可能性を秘めていますが、同時に最先端の設備、高品質の材料の確保、そして理想的な研究環境が求められます。加えて、技術革新を起こすためには、材料工学のトップクラスの研究者や専門家たちとの緊密な協力関係が重要であることはいうまでもありません。東北大学にはこれらを実現させるすべての要素が揃っているのです。東北大学との出会いは私の人生に大きな影響を与えてくれましたし、今後もそうあり続けると思います。博士課程に入学してからは、自分の知的好奇心がより一層高まっていることを実感します。最近は天文物理学や量子力学など、数学や物理学系の映像を見るのが楽しいです。自分の分野とは直接関係ないのですが、非常に刺激を受けますね。専門分野を深く掘り下げて探究すればするほど、異なるテーマをより深く理解でき、分野間のつながりを俯瞰的に捉えることができるのではないでしょうか。今は、この魅力的な知の冒険を楽しんでいます。小原 良和(取材:2019年4月)Insider tipInsider tipUnited States of AmericaYoshikazu OharaRyan Thompson我が国トップの材料研究を世界へ〜指定国立大学法人+マテリアル革新力強化戦略〜刺激的な知の冒険の深みへ
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