9TohokuUniversity, Faculty Of ArtsAndLetters2025 私は大学入学時には理系の学生で、再生可能エネルギーの研究をしたいと思っていました。しかし、高校時代は面白かった化学が大学では今ひとつ興味が持てず、3年次に文転をしました。 かつての自分は「科学技術が進歩すれば、社会もよくなる」という素朴な考え方を持っていたように思います。ところが先輩や友人と話をしているうちに、むしろ科学技術を利用する人間社会のあり方を考えることに興味を持つようになりました。文転を決めたときには一定の挫折を感じましたが、その過程で悩んだことはよい経験になったと感じています。 もちろん大学に入学する前から探求したいことが決まっているのも素晴らしいことですが、入学後に様々な知識や人間関係に触れる中で、興味関心が変わっていくことも決して悪いことではありません。むしろ、「分かっていたと思っていたことがよく分からなくなった」というように、人間や社会の複雑さに気づくことも学問の力ではないかと思います。 東北大学文学部には26の専修があり、皆さんの多様な関心に応えられる環境を提供しています。こうした中で皆さんと試行錯誤しながら充実した学びが行えることを楽しみにしております。 あなたの住んでいる「世界」は、どのような姿をしていますか。そして、どのようにして今の姿になったのでしょう。文学部で勉強することはすべて、何らかの形でこの問いにかかわることになると思います。 「インド学仏教史」という研究室名は、不思議に思えるかもしれません。なぜインドなのか、なぜ仏教なのか。およそ2500年前にガンジス川中流域で始まった仏教は、日本にも伝わり社会や価値観を形成する基盤の一部となりました。仏教がどのようにして生まれたのか、そしてどうなったのか、他の宗教との間にはどのような交流があったのか、などを考えながら、インドやスリランカ、チベットなどに伝わる原典に直に触れることができるのは、この分野の大きな魅力の一つです。また、インドの古い言葉はヨーロッパの主だった言語と共通の祖先を持ち、人類全体の歴史を考える糸口を与えてもくれます。 現在について問うことも、過去をたずねることも、あなたを未来へと導くはずです。東北大学文学部で一緒に未来を考えるため、あなたを待っています。Message教員メッセージインド学仏教史専修行動科学専修■■■■■■■■■■■■■■■■■“ Message from Teacher ”
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