「インターフェイス口腔健康科学」の誕生「口腔のインターフェイス」から「学問のインターフェイス」、そして「社会のインターフェイス」へ「インターフェイス口腔健康科学」の世界への発信とさらなる拡大06 かつて、歯学(歯科医学)として認識されてきた学問体系は、口腔疾患の治療論が主体であり、その病因論や根本となる基礎歯学はむしろ細分化され、体系化からはほど遠いものでした。2002年、東北大学大学院歯学研究科は、細分化されてしまった個々の専門分野を繋ぎ、口腔科学として体系化、すなわち再構築するために、「インターフェイス口腔健康科学」を提唱しました。 口腔は、「歯・粘膜・骨・筋等の口腔組織 この概念は、口腔科学・歯科医療・口腔保健の領域を網羅するだけではなく、医学、工学、材料学、農学、薬学など多岐にわたる学問領域に通ずるものであり、「インターフェイス口腔健康科学」の実践によって歯学研究のさらなる推進、そして関連領域との学際的研究の活発化が可能となります。2007年には文部科学省から「生体―バイオマテリアル高機能インターフェイス科学推進事業」が認められ、東北大学金属材料研究所等とともに、インターフェイスの制御を目指した新しいバイオマテリアルの研究・開発と臨床応用に取り組みました。2012年からは「生物―非生物インテリジェントインターフェイスの創成事業」が後継として実施されました。これらは、既存の学問分野を接合し新しい学問を創成するとい 「インターフェイス口腔健康科学」の概念は、現在、次世代の歯学・口腔科学として国内外に広く認められています。2005年には仙台にて「第1回インターフェイス口腔健康科学国際シンポジウム(International Symposium for Interface Oral Health Science: IS-IOHS)」を開催し、国内外から多くの研究者が集まりました。その成果は英文書籍としてまとめられ世界に発信されています。以降、本シンポジウムは約2年毎に開催され、2022年には第9回目を迎えました。20年前、歯学の再構築から始まった「インターフェイス口腔健康科学」は異分野共創、国際連携、地域連携を経て、さらに教育開発や食に関する学問「食学」の創生という新たな展開を見せながら、ますますその広がりを示しています。その基盤は、歯学・口腔科学の独自性と他の学問領域との普遍性を持つ独創的な教育研究への希求、そして、そこに集う教育研究教育者と学生の情熱という、歯学研究科が持つ特質にあるのです。(生体)」、「口腔に寄生する微生物(パラサイト)」、「生体材料(バイオマテリアル)」の3つのシステムから成り立ち、この3システムに咬合力に代表される「生体応力(メカニカルストレス)」が加わることが特徴です。「インターフェイス口腔健康科学」とは『健全な口腔機能は、システムとシステムの接するところ、すなわちインターフェイスが生物学的および生体力学的に調和することで成り立っており、うう「学問のインターフェイス」の具現化となり、異分野共創の先駆けとなりました。 さらに、健全な口腔機能を地域社会や国際社会で実現するためには、地域社会や国際社会との双方向コミュニケーションが不可欠です。すなわち、地域住民の口腔健康状況を把握しそこにある問題点を解決し地域に還元すること、海外の口腔保健状況を把握し必要なことを導入するとともに、海外と連携し日本の研究成果を国際社会に還元することが必要なのです。 本研究科は、2011年に「歯学イノベーションリエゾンセンター」を設置、その中に「国際連携推進部門」と「データサイエンス部門」を置き、それぞれを海外との連携および地域との連携の要としました。現在、米国(ハーバード大学)、カナダ(ブ蝕や歯周病、顎関節症などの口腔疾患はこれらシステム間インターフェイスの破綻によって生ずる「インターフェイス病」として捉えられる』という新たな概念に立脚するものです。 加えて、口腔そのものが、体内と外界とのインターフェイスであり、誤嚥性肺炎や消化管感染症等の口腔関連疾患もまたシステム間インターフェイスの破綻に起因すると理解されます。リティッシュコロンビア大学)、英国(キングスカレッジロンドン大学)、スウェーデン(ウメオ大学)、フィンランド(オウル大学)、アジア(北京大学、四川大学、上海交通大学、天津医科大学、大連市口腔医院、福建医科大学、香港大学、中国;ソウル大学、全南大学校、延世大学校、韓国;国立台湾大学、国立陽明大学、台湾;チュラロンコーン大学、プリンスオブソンクラ大学、コンケーン大学、タイ;アイルランガ大学、インドネシア;VSデンタルカレッジ、インド;モンゴル国立医療科学大学、モンゴル)、オセアニア(シドニー大学、オーストラリア)といった数多くの基幹校と国際学術提携を結んでいます。これら2つの部門は「地域社会・国際社会とのインターフェイス」として、大きな役割を果たしているのです。
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