東北大学 大学案内 2025年度入学者用
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0707 大学で学ぶことに対して情熱が薄れ、中退して働いていた22歳の時。友人がワーキングホリデーで日本に滞在してきたという話を聞き、なんとなく興味が湧いて自分も応募することにしました。初めての飛行機、初めての渡航で向かったのは、友人の滞在先と同じ宮城県仙台市。全く日本語を話せないまま仙台に来たため、バスに乗るにも買い物するにも苦労したことを覚えています。その後カナダに帰国し、再び働き始めたものの、もう一度勉強してみたい、学位を取得して違う仕事に就いてみたいという気持ちが膨らみ、再び大学へ。日本滞在の経験から履修していたアジアの歴史の授業中、ふと「教員になってみたい」と思い、授業後早速研究室を訪ねて、教員になる方法を教えてもらいました。そこから「研究者として生きたい」という情熱が燃え上がり、歴史学、特に日本の歴史を深く学ぶ道へと突き進んでいったのです。 現在の研究テーマは、「東北・宮城の農村の社会構造と農業発展の関係性」。具体的には、明治時代に、村や町の長たる人が、農業技術の発展に関してどのような役割を果たしたのかを研究しています。もともと農業についての知識や深い興味はありませんでしたが、今まで自分が知らなかったこと、そしてまだ研究が進んでいないことを解明してみたいという思いから、この分野を選んだ経緯があります。また、フィールドを宮城に絞ったのは、ワーキングホリデーで仙台に滞在した縁、妻が仙台出身であるという縁があったため。宮城には古くから農業の歴史がある点も魅力的でした。調査を始めてみると、現存する村史などから、もとは裕福でなかった町村が、米づくりなどの農業を通して豊かになっていったという話がたくさん出てきました。その代表的なエピソードとして知られるのが、鹿島台村(現・宮城県大崎市)の村長であった鎌田三之助という人物です。彼は衆議院議員を経て鹿島台村長に就任し、農業を軸に村の財政を建て直し、“わらじ村長”と呼ばれて村民から親しまれました。鎌田氏のような話は宮城県内のあちらこちらにあり、史実を紐解く面白さ、そして歴史のピースを組み合わせて物語を紡ぐ楽しさを感じさせてくれます。 今後の研究目標は、戦後の農地改革がどのように進められたのかを解明すること。また、メディアに詳しい東北大学の先生との会話からインスピレーションを得て、アメリカの漫画の成熟と戦争がどのように関係していたのかも調べてみたいと思っています。東北大学は研究室や分野間の壁がなく、フラットに協力し合える点が特徴。学問の面では、クリエイティビティを成長させるきっかけにも満ちているといえます。今取り組んでいるテーマがどのように発展していくのか、楽しみながら研究を続けていきたいですね。RESEARCH東北大学の研究Introduction to Research in Graduate School Faculty of Arts and Letters.東北・宮城の農村が発展した経緯と、キーパーソンを追う。PROFILE大学院文学研究科・文学部日本学専攻日本文化学講座現代日本学分野クレイグ・クリストファー・ロビン・ジェイミー教授ブリティッシュコロンビア大学歴史学部卒業、同大学歴史学修士課程修了、コロンビア大学歴史学博士課程修了。コンコルディア大学歴史学部非常勤講師、ブリティッシュコロンビア大学文学・科学科/芸術・言語科専任講師を経て、2015年より東北大学へ。研究分野は日本史。2006年より「近代農村」、2016年より「植民地」を研究課題とする。INTERVIEWCHRISTOPHER ROBINCHRISTOPHER ROBBINJAMIE CRAIGJAMIE CRAAIGPROFESSOR

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