09Introduction to Research in Graduate School of Science.大学院理学研究科地球物理学専攻 太陽惑星空間物理学講座惑星大気物理学分野東北大学理学部卒業、東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程修了後、広告代理店勤務。2005年より日本学術振興会特別研究員。2007年より東北大学大学院理学研究科 月探査衛星かぐやプロジェクト研究員。2010年同研究科助教、科学会等所属。受賞歴にNASA Group Achievement Award等。2023年准教授に就任。地球電磁気・地球惑星圏学会、日本惑星思いでさまざまな研究に打ち込み、得意ではなかった装置開発にも取り組むようになったのです。その結果、自分の武器になる研究成果を生むことができ、諸外国と強固な協力関係を構築し、各プロジェクトの責任者に誘ってもらえるようになりました。絶対に諦めたくないと思えるくらい好きなことがあるのは、とても幸せなことですね。 理学部は、物の理を理解する学問です。卒業後、専攻した分野の道に進まずとも、身につけた論理的な思考力は社会で発揮され、築いた人間関係はまたどこかでつながります。高校生の皆さん、理学部で、東北大学で、情熱を注げる好きなことを見つけ、人生を豊かにしてもらえたら嬉しいです。お待ちしています。幼い頃の夢「惑星学者」を叶え、火星探査プロジェクトの最前線へ。中川 広務准教授 少し前までは国家間で激しく競っていた宇宙開発ですが、現在は複数の国で協力して国際的プロジェクトを立ち上げ、完遂を目指すケースが主流になってきました。民間企業の参入も増え、宇宙は今後ますます身近になるのだと実感しているところです。 私が携わっている複数のプロジェクトのうちの1つ「M-MATISSE」も、欧州宇宙機関(ESA)のミッションに宇宙航空研究開発機構(JAXA)が装置提供を通して協力。火星の現在の環境と宇宙との相互作用の理解を目的とし、宇宙環境をモニターする探査機と、大気の応答を知る探査機の2機体制で探査に臨みます。探査機にはさまざまな装置を搭載するのですが、私は火星のオーロラを高感度で撮影するカメラの開発チーム責任者として、国内外の研究者と連携を図りつつ計画を進めています。 また、JAXA主体のプロジェクト「MMX」では、“世界初の火星衛星サンプルリターンミッション”の実現を目指し、火星衛星観測に用いる近赤外分光器の開発に取り組んでいます。装置の製造自体は主にパリ天文台・フランス国立宇宙研究センターが担当しているため、私はチームの副責任者として、ミッションの成功を目指し奔走しているところです。「MMX」は2026年度に探査機打ち上げ、2027年度に火星周回軌道投入、2031年度に地球帰還を計画しています。皆さんが東北大学に入学される頃には、探査機が火星の周りを回っているかもしれませんね。 私が惑星に興味を持ったきっかけは、幼い頃に見上げた星空でした。郊外で見る星は市街地よりも明るく美しくて、なぜ違って見えるのか疑問を抱いたのです。小学校の卒業アルバムで「惑星学者になる」と宣言し、それからずっと惑星に夢中。中でもすぐ隣の兄弟星、火星が好きで、当時進行中だった日本初の火星探査機「のぞみ」の開発プロジェクトに携わるべく、東北大学理学部に入学しました。残念ながら「のぞみ」の火星周回軌道投入は叶いませんでしたが、海外の研究者を見返したい、他のプロジェクトで□回したいという強いPROFILEINTERVIEW
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