平成30年度 筑波大学入学案内
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や語順は本質的なことなので、狭いけれども汎用的でもあるわけです。辞書に載っている単語の意味をすべて覚える必要はありません。根本的な意味や感覚さえ理解すれば、別の熟語も理解できます。 語順も同じ。英語を話す上でネイティブの語順の感覚を身につけることです。語順と単語が正しければ多少ブロークンイングリッシュでも相手に通じます。そのために指導者がすべきことは『正しいのは(ア)ですか(イ)ですか』なんていう問題に時間を費やすのではなく、徹底的に声を出して英語を話させることです。口から出たことのない言葉は話せません。 ですから僕の授業では、これまでの「読解」を目標にした英文法ではなく、「会話」に特化した説明をします。そしてどんどん英文を覚えて、口に出してもらいます。楽しみながら自然に頭に入ってくるというのが、僕の考える理想の授業です。 注意を惹くために手や指をならしたり、話すテンポや声色を変えたり、受講生が集中力を保てるような工夫も大学教員になってからできるようになったと思います。― 大学教授、英語講師のほか教材出版や講演など多忙な大西さんにとって、この先のビジョンを教えてください 英語ってそんなに難しいものじゃないし、がんばって覚えるものでもないというのが20年以上英語を教え続けて思うことです。まず、この「難しい」という壁を取り払うこと、そして時間をかけすぎないことです。 高校までの学校教育において、これまでの英語は「訳す」ことが主でした。高校を卒業したら普通に海外で英語が話せるというようにこの国の学校教育を変えることが、僕の目標です。それも近い将来に。そのためには教科書に載せる文法はもっと簡略化しなくてはいけないし、指導要領も変えていかなくてはいけません。いまはそのために、教科書の執筆や教材開発に取り組んでいます。― 最後に、後輩へのメッセージをお願いします 僕の英語教育者としての現在の仕事は英語の知識だけに支えられているわけではありません。内容を正しく、なるべく受け手の負担にならないように伝える編集テクニックは、どんな素晴らしい英文法の古典にも載っていません。工程管理や人為ミスを防ぐための技術書は、本の構成に応用できます。専門とはかけ離れた世界に触れる、学際的な学びを継続する、そういうことが自分の専門性を社会に生かすことに繋がっていきます。 だからまず、食わず嫌いな分野の授業を受けてさまざまな領域に触れてください。そして読書によってロジカルな思考を養うことです。もうひとつ、スポーツやトレーニングで体力を培うことも大切です。20代でつけた体力や集中力はその後の人生の気力に繋がります。人生には孤独に耐えてでもがんばらなければならない場面があります。仲間だとかコラボだとかばかりに血道をあげるくらいなら、トレーニングするか本を読んだ方がずっと有意義です。真の意味でクリエイティブな考えは孤独な精神にしか宿りません。孤独の価値を見極めてほしい。 大学には永久にいられるわけではありません。与えられた素晴らしい環境を生かして、貪欲に4年間を過ごしてください。それがいつか皆さんの宝物に変わるときが来るはずです。2011年初版の『一億人の英文法』(東進ブックス)は「Amazonランキング大賞2016」の本の部門で和書総合13位、英語学習2位にランクインするロングセラー3

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