2020年度 筑波大学入学案内
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安達 美桜(社会学主専攻)生沼 徹訓(政治学主専攻)中西 烈(法学主専攻)武田 梓(経済学主専攻) 皆さんは、大学で学びたいこと、そのまとめとして取り組む卒業研究等に具体的なイメージをお持ちですか。既に明確な目標を見据えている方も、自分が何を学び、将来どのようなキャリアを歩むのかをまだ考え切れていない方もいらっしゃると思います。私が受験生の頃は後者のタイプで、ひとつの分野に関心を持つというよりも、文化や観光、メディアなどに興味があり、分野が絞り切れてはいませんでした。そんな時に目に留まったのが社会学専攻です。 社会学とは、社会における集団や他者との関わり方などから社会の仕組みを考える学問です。社会学的な観点から考察できるものであれば、世の中のほとんどの事象が研究対象となります。例えば、労働、医療、犯罪...私は、研究テーマの自由度の高さが社会学専攻の魅力のひとつだと思います。 実際に私は4年間社会学専攻として、メディア社会学、教育社会学、「戦争と社会」など様々な分野を勉強してきました。吸収した幅広い知識を用いて、以前よりも広い視野で物事を捉えられるようになりましたし、家族社会学の知識が労働社会学の学びに役立つなど、ひとつの問題を多角的に検討する力が培われました。さらに社会学類では、隣の主専攻の科目を通じて、経済・政治・法などの視点から家族や労働について考えることもできます。 もちろん、社会学専攻の学生の中には、入学当初から都市社会学について学びたいという意志を持ち、4年間をかけ都市社会学について深く学んでいるような学生もいます。社会学専攻では「深く突き詰めて」学ぶことも「幅広い視野を持って」学ぶことも可能です。皆さんも社会学専攻でキャリアの可能性を広げ、自分の価値観を深めてみませんか。 私は高校生の時に警察官を志し、大学では社会のルールである法律を学びたいと考えました。社会における「正しさ」を自分で判断する力を身につけ、警察職務に活かしたいと思ったからです。しかし本学で学問としての法を学ぶにつれ、法律が存在するからと言って人の行為における「正しさ」の線引きが直ちに可能になるわけではない、と感じるようになりました。正しいことは、一つに定まりません。それは法律自体においても同様です。法律に触れて得られる具体的な知識と、講義や演習を経て養われる法を扱う感覚の二つが合わさり、法的問題に対する自己の意見が形成されます。それは人によって異なるものであり、法を通して生まれた価値観です。他者の価値観に触れることが更なる法の理解につながり、自分の将来においても活かされると感じています。 また、筑波大学の特色として、専攻や学類間の垣根が低いことがあげられます。そのため、社会学や政治学、経済学の授業や他学類分野に触れるにあたり、法学の知識を活かすことでより多面的な学習をすることができます。法律は社会における基本的なルールであり、様々な学問とつながる部分があるからです。それは逆に、法学に限らず幅広い分野を学ぶことができるからこそ、法学のより深い理解が可能になるとも言えます。 さらに、法学専攻におけるゼミ活動も魅力の一つです。ゼミは比較的少人数で構成されるため、教授や他の学生と積極的な議論を行う場になります。発表・議論を通じて判例や学説の理解を深めるとともに、他者の価値観に触れて自己を見つめ直すことができます。 法律は、いつも私たちの生活のすぐそばにあります。筑波大学で法律を学ぶ選択を、私は強くお勧めします。 政治とは社会科学を学んだり、考えたりする上で必ずと言って良いほど関わってくるものです。例えば、何かを輸出したり、企業が進出したりする経済を考える場合でも輸出先、進出先の国の政治状況、規制があり、どうしてもそれらを考慮しなければなりません。それは、国の政治状況が反映される法律、文学を学ぶ上でも然りです。つまり、政治を知ることが世の中の事象を幅広く知る契機になるということです。社会の仕組み、世の中の出来事を学ぶことで知識的な豊かさの追及にもなります。そして何よりも物事に対して自身の意見を持つ、多様な価値観を持った人と喧々諤々と議論を交えることで多様な考えを知るということが政治学を学ぶ上での最大のメリットだと思います。これは、学問を飛び越え、人としての自己成長、自分という軸の形成にも寄与し、今後の社会人としての素養にもつながります。 私自身当初は政治についての知識はほとんどありませんでした。しかし、筑波大学社会学類の政治学専攻では、ホットな安全保障の問題やグローバルな難民問題だけでなく他国の政治、政治思想といった幅広い分野もまんべんなく学ぶことができます。それだけではなく、3年次からのゼミでは少人数制でより専門的な知識を深めるとともに、自身の関心に沿った分野の研究をすることができます。私は国際系の政治学のゼミを受講していますが、他国の経済や、日本の政策などを考慮に入れ、ゼミ論を作成しています。研究にあたってのアドバイスなどを先生に仰ぎつつ、意見や疑問点などを一緒に受講している友人からもらうなどをしてとても充実しながらの生活を送っています。 みなさんは食べ放題のお店に行った時、できるだけ沢山食べた方が得だと思っていませんか?確かに、金銭的な損得で考えるといくら食べても料金は一定なので量を増やすことが良いように思えます。しかし、経済学では必ずしもそうは考えません。満腹になるまでは食べた分幸せになりますが、それを超えると苦しくなり、幸せな状態から離れていきます。経済学は人々の満足感を最大にすることを追求する学問です。つまり、ここでは限界を超えて食べ続けることではなく、自分にとって丁度良い程度で終わらせておくことで最大の満足を得られると考えます。ただ、“丁度良い程度”には個人差があるため、お店はそれを考慮した理想の料金設定にしているだけなのです。 私が経済学に惹かれたのは、文理が絶妙に融合している分野だからです。人間や社会という不確かなものを相手にしながら、数学や論理的思考といった明確な手段を用いて解明を試みるところに面白さがあると思います。社会現象を分析する時に常識論のみで根拠がなければ相手を説得させることはできません。数理モデルを利用し根拠を明らかにすることで、建設的な議論ができるのです。 筑波大学の社会学類で経済学を学ぶことの魅力は、他専攻の授業を受け、幅広い知見を身につけられることです。1つの社会課題をとっても経済学的に考えるのと社会学的な見方をするのでは、全く異なるものが見えてきます。多角的な視点を持つことは、視野を広げ多様な価値観の理解にもつながります。 私は今後、交換留学制度を利用して海外で経済学を学びたいと思っています。学問に限らず挑戦したい事を見つければ、それを可能にする大学生活を自分で設計できます。みなさんも社会学類でやりたい事を見つけ、有意義な生活を送りませんか。34

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