筑波大学入学案内 2021
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上原子 真衣(社会学主専攻)大場 優志(政治学主専攻)久保 未来音(法学主専攻)井上 紗葉子(経済学主専攻)28「政治」と聞くと、議会のことや政府省庁のことが思い浮かび、難しく感じたり、私たちからかけ離れたことのように思えるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。 人は誰しも、異なった部分も同じような部分も持っています。例えば友達と仲良くしたり、読書会やサークルといった好みや目的を共有できる団体を築くこともできます。しかし突き詰めて議論をすると、身近な友達とすら意見が対立することがあります。隣人の行動に我慢できないこともあるでしょう。さらに、現代ではグローバル化とそれに伴う多様化で、自分と異なる文化や利害関心を持つ人々とどう共存していくかということが課題となってきています。一見平和に見えても、世界では異なる価値観による対立が常に生じています。 政治学は、相容れないような人々がどのように共存できるのかという問題に取り組む分野です。私たちは日々、他者との軋轢、あるいは一体感を感じています。そこに既に「政治」はあるのではないでしょうか。例えば、ヘイトスピーチを表現の自由として認めるべきか、差別や危害として禁止すべきか。このような議論は道端でも、ネット上でも、国会でも行われます。特に国会での議論の結果は法律として強制され、違反すれば刑罰が与えられます。例えば、日本では同性愛への罰則はないですが、同性愛者を死刑にする国もあります。したがって、政治は、人々の日常生活に重大な結果をもたらすものなのです。過去には独裁政権の誕生や、戦争の勃発といった経験もあります。 だからこそ、私たちは政治をより良くする必要があります。政治学主専攻では、政治が動くシステムや、政治の捉え方を学ぶことができます。ここで学んだことは、政治参加、仕事、さらには他者との関わり方にも活かせることです。皆さんもぜひ、政治学を学んでみてください。 皆さんは、大学で学びたいことが明確に決まっていますか。私は、高校生の時点で学びたい分野が具体的にイメージできなかったため、入学段階で専攻を一つに絞る必要がない社会学類を選択しました。 社会学類は、社会・法・政治・経済の4つの専攻に分かれており、3年で自分の主専攻を決定します。1,2年では全ての専攻の基礎となる授業を受けながら、自分には何があっているのか、本当に学びたい事は何なのかを見極める時間が十分に与えられています。 私が基礎を学ぶ中で1番興味を抱いたのは経済学でした。人々の満足度を最大にすることを目指す経済学では、個人の好みを定式化し、論理的な思考で理想的な資源の配分を考えます。例えば、ショッピングに行った時、限られた所持金で何をどれくらい買うと最も幸せになれるのかを考えます。 不確かな人間や社会について、事例や感情論だけではなく、式や図を用いながら根拠を示して考察するという合理的な考え方がとても面白いと感じました。 また、先生方の専門分野ごとに授業や少人数のゼミが開設されており、「経済学」という学問について多角的なアプローチや方法を知ることができるのも魅力の1つです。 ただ、経済学の観点からだけでは、物事の考え方に偏りが生まれます。それゆえ、多様な分野から学ぶことも重要です。経済学とともに、他専攻の授業も色々受けることができる社会学類だからこそ、有益な学びができると思います。 皆さんも是非、社会学類に入学して自分の学びたいことを見極め、経済学とともに、他専攻の授業も受けることで幅広い知識を習得し、多角的なものの見方を身につけてみませんか。 皆さんの中には「法律なんか勉強して自分のためになるの?」、「法律とか自分には関係ないや」と考えている人が少なからずいると思います。私も高校生の時はそのような考え方でした。 しかし、実際に法律について学んでみると、法律というものは私たちの日常に深く関わっていて、法学を通して新たな価値観の形成をすることができたように思われます。それは、筑波大学の特徴ともいえる、ほかの専攻や他学類の授業を容易に受けやすいという点が大きく影響していると私は考えます。 というのも、ほかの専攻を学ぶ際に法的な知識が必要となる状況や、他学類の授業で法的な解釈が重要になる分野に触れることがあります。こういった場面に関わっていることを強く認識させられるだけでなく、法学だけを学ぶようでは到底できない深い理解まですることができたと考えさせられました。また、法的な知識や自分の意見・考えが形成された状態で法学以外の分野を学んだ際に、自分の考え方の過ちや改善点について発見することで自分自身の考え方を深めるのみならず、より良いものに発展させることができたと思います。 上記した“新たな価値観の形成”という点から法学主専攻におけるゼミも一つの魅力です。ゼミとは比較的少人数で行う授業のようなもので、教授やほかの学生たちとの距離感が非常に近く、教授やほかの学生たちの価値観や意見を議論・発表を通して理解することができるので自身の価値観や意見の形成に役立てることができます。 社会に根差した法律について学ぶことで、自身の価値観や意見を形成することのできる法学という分野を筑波大学で学んでみてはどうでしょうか。 社会学を知っていますか。あまり多くの人が学んでいる学問ではないですし、何かと聞かれた時に説明も難しいです。社会学では、世の中のほぼ全ての事象が学ぶ対象になります。それはもう幅広いです。進路を選択する時って、自分の興味のある学問を考えますよね。私は社会学をやってみたいなというぼんやりした思いで筑波大学の社会学類を受験しましたが、最初から社会学に興味があったわけではありません。学部選びの時はどちらかというと消去法でした、文学部にも法学部にも経済学部も、興味があまりわかなくて。私は大学に入って社会学の授業を受け、身近にあることが学問のテーマにされている社会学を知ると同時に驚き、その新鮮さと面白さ、なんてとっつきやすいのだろうと思い専攻にすることを決めました。例えばですが、「部活」、「スクールカースト」、「コミュ障」、「アイドル」など高校生でも日常会話でよく口にする言葉をテーマにできる学問って社会学くらいではないでしょうか。 筑波大学社会学類では、1,2年生の頃から四つの学問の授業を受けることができ、社会学主専攻の生徒の多くは2年生からゼミに入って学びます。先生によっても年度によっても学べる内容は異なり、見学に行ったりして自分の興味にあった内容を学ぶことができます。異なる内容の社会学であっても先生が同じであれば似通った見方があり、先生個人の人間味が授業に出てくるのも社会学の面白いところです。 私が社会学を学んで一番得ていると思うものは「社会学的な視点」です。一つの事象を考えるに当たって学べば学ぶほど視点が増えていると感じます。これって学問の醍醐味ではないでしょうか。ここで学び、得たことが、これから過ごす生活に彩りを与えてくれると思っています。

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