筑波大学入学案内 2021
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先輩からのメッセージ学類長からのメッセージ生物資源学類長菅谷 純子専門性を持って取り組むことができる人材の育成を目指しています。そのために、さまざまな分野の講義、フィールドやラボにおける実験や実習、海外への留学や留学生との交流などによる教育を行っています。この学類で学ぶことで、それぞれが自ら未来を描き実現するための基盤を作っていけるよう期待しています。皆さんと一緒にがんばっていきたいと教職員一同ご入学をお待ちしています。 近年、地球上では、環境問題や食料問題などの課題がより身近に感じられるようになってきています。これらの生物資源に関わる課題を解決するためには、農学や森林科学、応用生命化学、環境工学、社会経済学などの分野から多面的にアプローチし、それらを統合して考える総合科学が必要です。生物資源学類では、多様な生物資源を理解し、地球規模の課題から分子レベルの課題まで、広い視野と高い生物資源学類を志す皆さんへ52農林生物学コース  本田 悠理子 大学入学後、専門科目の授業を通して、作物の育種に興味を持ちました。農林生物学コースでは作物の育種技術についてはもちろん、育種を理解するうえで重要な作物の生理や生態など様々な分野を幅広く学ぶことができるため、このコースに進学しました。 私はトマトの収量増加を目標として、果実肥大について研究をしています。所属研究室ではある遺伝子が変異することにより、トマトの果実肥大が強化されると考えられている変異体を所有しています。しかし、その変異体の果実肥大がどの程度強化され、優れた育種材料として利用できるのかということについては不明でした。卒業研究では、変異体を栽培して収量や果実の表現型などを調査し、遺伝子の変異によってトマトの果実肥大がどの程度強化されるのか、その変異体が果実肥大を強化した品種開発のための新たな育種材料となり得るのかということについて評価を行いました。  生物資源学類には幅広い専門分野があり、それぞれの研究室で多種多様な研究が行われています。幅広い分野の知識を身に付けることができるだけではなく、より深く掘り下げて学ぶことも可能です。まずは幅広く様々な知識を身に付け、たくさんのことを学んでみてください。入学して間もない頃は漠然としていても、生物資源学類で多くのことを学ぶにしたがって、きっと興味や関心のある分野が見つかるはずです。そしてその興味や関心を突き詰め、学生生活を充実したものにしてほしいと思います。環境工学コース  広田 恭子 高校生の頃より食料や環境問題に興味があり、将来はエンジニアとして国内外で活躍したいと考えて生物資源学類に入学しました。環境工学コースを選択したのは、山・水・農地といった農業の基盤を工学的かつ幅広い視点から学ぶことにより、世界を見渡しながら専門的技術を身につけられると考えたからです。 学類では、水資源環境工学研究室で「水田水管理の可視化」について研究しました。修士課程では、連携大学院制度を利用し、国立の研究機関でも研究に励みました。研究学園都市であるつくば市は、様々な機関と共同研究を行いやすい魅力的な環境です。また、環境工学コースの先生方は学生との距離が近く、わからないことがあれば他の研究室の学生でも丁寧に教えてくださいます。 私は現在、農業機械メーカーのエンジニアとして、海外における農作物収量の向上を目指し、毎日全力で、かつ楽しみながら働いています。環境工学コースで多様な視点と論理的に思考する習慣を身につけたことが、今の仕事を行う上で大変役に立っています。 生物資源学類は多様な分野を学びながら、本当になりたい自分を実現する環境が整っています。また、全く異なる将来目標を持つ友人とも出会えます。ぜひ生物資源学類に入学し、自分の可能性を目いっぱい広げてください。社会経済学コース  高瀨 一綺 社会経済学コースでは、社会学や経済学といった分野から、農林業分野における課題解決の最前線の問題に取り組むことができます。当コースの卒業研究の例を紹介しましょう。まず私は、ベストワーストスケーリングという定量的相対評価手法を用いて、全国の担い手稲作経営者が将来のコンバインにどのような技術を求めているのかを明らかにしました。また、ある学生は、子ども食堂の運営とその課題及び解決策について、自身の食堂運営経験や運営団体へのヒアリング調査などをもとに論じました。定量的な分析と定性的な分析、どちらを欠いても当コースの研究は成り立ちません。私自身、統計データだけを見て分かった気になり、農家とお話して間違いに気づかされた経験があります。社会経済学コースはそのようなマクロな視点とミクロな視点、どちらも身に付けることができる場であると思います。 もちろん、このような問題意識をはじめから持っている学生ばかりではありません。講義や実習を通して、各分野のフロントランナーである先生方が様々な学問の種をまいてくれます。その種が私の中で芽を出し、今では国内外の農家を支援する活動や農場の運営に携わるようになりました。 皆さんも、ぜひ生物資源学類に入学し、素敵な仲間とともに自分のやりたいことを見つけてください。何にでも挑戦することのできる刺激的な学生生活が皆さんを待っています。応用生命化学コース  下段 千尋 元々は食に興味があり、食を通して社会に役立つ勉強や研究がしたいと思い、生物資源学類に入学しました。1・2年次に授業や実習を受ける中で、直接見ることの難しい細胞や分子のレベルで生命現象を理解したいと考え、応用生命化学コースを選びました。動物・植物・微生物などあらゆる生物に共通する普遍的な生命現象について学べるのが、このコースの楽しいところです。また知識だけでなく、それをどのように役立てるかという考え方も身に付けることができます。卒業研究では、微生物の細胞が持つ指紋のような特徴(自家蛍光シグネチャー)を解読する研究を行いました。所属研究室では、この特徴を細胞1個1個から取得して解析する技術を開発し、それらが細胞内部の状態を反映することを解明していました。私はこれを用いて、通常の顕微鏡では捉えることのできない微生物の「生」と「死」における細胞状態の違いを調べました。この研究は一見基礎的で、学類を選ぶきっかけとなった食とは関係がないように見えますが、例えば食品製造の現場で雑菌汚染を防ぐための除菌・消毒の有効性を評価する方法として、食に貢献できる可能性も秘めています。特定の分野を突き詰めることも楽しいですが、大学に入学したらまずはいろいろなことに挑戦してみてください。生物資源学類では、農学に関する非常に幅広い分野を学ぶことができます。全く関係がないと思っていた物事が思いがけないところで繋がっていたり、それまで考えもしなかったことに、夢中になることがあるかもしれません。

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