筑波大学入学案内 2021
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数学類長からのメッセージ筧 知之数学類長Q 筑波大学数学類の特色は、何ですか?A 筑波大学数学類には約40名の教員がいます。卒業研究などのセミナーによるきめの細かな指導は、筑波大学数学類の伝統です。授業に関しては、代数、解析、 幾何といった抽象的な数学を学べるだけでなく、数理統計学、数理論理学、計算機数学といった応用的な数学も学ぶことができます。これが、筑波大学数学類の大きな特徴です。他学類の授業も比較的自由に受講することができます。学生に関しては、本学の前身が東京教育大学ということもあって教員免許を取得する人が多く、これも筑波大学数学類の特徴といえます。Q 筑波大学数学類を卒業すると、どんな職業に就けます か?A 現代社会は、科学・情報技術に大きく依存しています。科学・情報技術において、思考の基本的な枠組みを提供する共通の言語が、数学です。現代社会が、数学に秀でる人材を多く必要とする理由が、ここにあります。筑波大学数学類の卒業生は、数学の研究者をはじめ、アクチュアリー、システムエンジニア、医学薬学統計などの統計解析に携わる職種、金融商品の開発や投資戦略を考案する職種、中高等学校の教員など、幅広い分野で活躍しています。Q 数学は、どのようなところで役に立ちますか?A 数学は、科学の多くの分野で、理論を記述し展開するための基礎学問になっています。数学は、その厳密性や普遍性により、多くの科学研究の土台として、科学の発展に多大に貢献しています。数学は、物理学、工学、経済学、生物学などに広く応用され、また、統計学を通じて医学や心理学、社会調査、保険業などにも使われています。数学は、現代社会において多様な役割を担っているといえるでしょう。Q 筑波大学数学類の授業は、どのようなものですか?A 大きく分けて、講義と演習そしてセミナーがあります。講義では、「関数の連続性とは何か?」「f(x)=x が連続なのはなぜか?」のように、『とは』(定義)と『なぜ』(証明)を重視します。演習では、練習問題を解いて理解を深めます。セミナー(外書輪講・卒業予備研究・卒業研究)では、学生数名がグループを作り、指定されたテキストの内容を交代で説明し、担当教員の指導のもとで議論を深めます。筑波大学数学類では、受講生が問題を解けるようになるだけでなく、数学の理論体系を組み立てられるようになることも目標としています。 数学という学問は、様々な学問の影響を受けて発展してきており、それ故、研究内容も複雑に分化しています。しかし、大雑把に言えば、現代の数学は代数学、幾何学、解析学、応用数学(※数学類では情報数学が該当します)の4つの分野から成り立っています。数学類では、学年が上がるにつれて、上記4分野においてより専門性の高い科目を習得していくことになります。科目によって内容は異なりますが、共通に必要とされることがあります。それは、「自分で論理的に考える」ということです。現代社会では全体に自分を合わせることが尊重され、また、このIT社会ではネットを通して受け身の立場で多量の情報に接し続けるため、思考停止状態に陥る傾向にあります。しかし、そのような時代であるからこそ、自分の意志で論理的に考えることが重要となります。そして、論理的に考える力を養うために最も適した学問こそが数学なのです。数学では、当たり前だと思っていることに徹底的に拘ります。そして、普段曖昧に理解していることに明確な定義を与え、厳密な論理の積み重ねによって結論へと到達します。このような言い方をすると、数学とは窮屈な学問だと思われるかもしれません。しかし、こうした努力の先に美しく高度に体系化された世界が広がっているのです。苦労して数学の問題に取り組み解答が分った時の感動を経験した人は多いと思います。この感動をもっと深く味わいたい人、そして、美しい真理の世界を探求したい人を我々はお待ちしています。60

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