筑波大学入学案内 2023
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 私が社会学専攻を選択した理由は、社会学では身の回りに溢れている疑問や違和感のすべてを研究テーマとして取り上げ、考察できるということに面白さを感じたからです。 例えば、「イクメン」という言葉について。世間では、育児をする男性に対して用いる「イクメン」という言葉が浸透しています。育児に積極的な男性、素敵だなあと高校生の頃の私は思っていました。その一方で、親である以上育児の担い手に男も女も関係ない、男性を褒めすぎじゃないか、という違和感を持っていました。大学で家族社会学やジェンダー社会論を学び、この疑問や違和感を社会学という側面から考察してみると、家父長的な家制度や性別役割分業思想の名残であることが見えてきました。自分の感じた違和感に対して、その背景や理由を知る事ができました。 また、社会学という学問では、身の回りのあらゆる事象に対して自ら問いを立ててみる機会がたくさんあります。そしてそれは、物事の裏には必ず理由や背景があることを知るきっかけとなります。これを継続することで、日々の生活の中で感じた疑問を自ら明らかにする力や習慣を身につけることができます。そこに面白みを感じる事ができるようになれば、何気ない日常生活からも違った景色が見えてくるようになります。 社会学専攻では、犯罪、格差・不平等や貧困、都市・地域、メディア、スポーツなど、自分の身近にある多様なテーマを社会学として取り上げることができます。自分の好きなこと、興味のあることから学びを得ることができるのです。このようなことに魅力を感じる方は、是非社会学を専攻してみてはいかがでしょうか。きっと、自分が興味をもったことに対してより考えを深めることができます。 「大学で法律を勉強している」と人に話すと、「弁護士になるの?」としばしば聞かれます。やっぱり、法律と聞けば弁護士や裁判官といった職業を連想しますよね。でも、法律を学ぶことはそんなに大層なことではないんです。私がお伝えしたいのは、法学はとっても身近でおもしろい学問であるということです。 刑法の条文を例にとってみてみましょう。例えば、刑法204条は「『人の身体を傷害した者』は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定します。傷害罪の規定です。では、医師が手術をする際に患者の身体にメスを入れる行為は、犯罪になってしまうのでしょうか。格闘技の試合で人を殴って怪我をさせたら、犯罪になってしまうのでしょうか。答えはNOです。これらの場合、「正当業務行為」として正当化され、違法ではないため罰しない、という結論になります。このことも刑法の条文に定められているんですよ。このように、あらゆる根拠を踏まえた上で事案に法律を適用し、結論を導き出す過程は、論理的で興味深いものではないでしょうか。 私が法律を学ぶことに魅力を感じているのは、世の中に溢れる法律を知り、なぜそのような規定があるのか、どのように使うのか等を学ぶことができるためです。法学主専攻では、1年次から講義で知識を深め、3年次からのゼミでアウトプットを行います。私は3・4年次を通して刑事訴訟法と民法のゼミに所属していますが、ゼミでは、各法律学に興味を持つ学生が集い、意欲的に議論を交わしています。自分の興味のある学問について、仲間とともに真剣に考えることができる環境があることは、とても素敵で恵まれていると感じます。 皆さんにも是非、社会学類で法学に触れ、法律を学ぶことの面白みを感じてみてほしいです。32 「私は大学で何を得ることができるだろうか?」将来のイメージを掴めていない私は、大学受験にあたってこのような疑問を自分の中で持ち続けました。私が最終的に出した答えは、私自身の「考える力」を養うというものでした。 社会科学においては、明確な答えのない問いが多く存在します。その中でも特に、政治学においては、異なる価値観や意見を持つ人々の間に生じる対立に、多角的な視点から向き合うことが求められます。そうした問いに対して、様々な論文や統計を用いながら考察するだけでなく、フォールドワークや議論などを通じて、そこに存在する現実を知り、多様な考えを知りながら自分なりの答えを導き出していくことは、私自身の「考える力」を養うことにつながると確信したのです。 筑波大学社会学類は、上記のような、多角的な視点を持ちながら物事を「考える力」を養う場として最適であると私は感じています。社会学類は、社・法・政・経の分野を内在しており、1・2年次にはそれらを満遍なく学びながら、それぞれの分野の問いに対して考えることができます。こうして得た知識や経験は、専攻を一分野に絞った際にも役立ちます。政治学主専攻であれば、一つの政策をとっても、政策が成立した社会的な背景や、その政策によって経済的にどのような影響が生じるか、また、その政策に関連する訴訟などを検討することによって、その政策の良し悪しをより深く論じることができるようになります。 グローバル化などを背景として、現代社会はより複雑化していっています。今までの当たり前が、近い将来には当たり前でなくなることが多く発生する世の中で、「考える力」を鍛えることはそうした事態に対応できる自分を得ることにつながるのです。皆さんもぜひ、社会学類政治学主専攻で、「考える力」を鍛えていきませんか?サンノミヤ・フェルナンド・マサカズ(政治学主専攻) 皆さんは大学で学びたいことが具体的に決まっていますか。私は高校生の時点で大学に入ってから学ぶ分野を具体的に絞ることができなかったため、社会科学の基礎を学んでから専攻を決めることができる社会学類を選択しました。 社会学類は1、2年次にすべての専攻の基礎を学びながら、自分が興味を持ち本当に学びたい分野を探す時間、機会が十分に与えられています。 私が基礎を学ぶなかで一番興味を持ったのが経済学でした。入学当初、経済学は数学を使ってお金を儲けたり、社会の効率化を考える学問であるというイメージを持っていました。 しかし、実際に学んでみると私のイメージとは異なり、歴史や思想と絡めて考えたり、統計データや経済実験の結果等の根拠を示しながら客観的に考察したりと、とても奥深くて面白い学問であることがわかり、経済学を専門に学んでみたいと思いました。専攻が分かれてからは、先生方の専門分野ごとに少人数ゼミが開設されていて、より親密に、また多角的に経済学を学ぶことができる点も魅力の1つです。 また私は女子サッカー部に所属しており、勉強と部活動の両面で充実した日々を送っています。1、2年の時には、体育専門学群など他学群の興味のある授業もとっていました。そのなかにも社会科学や経済学の考え方が生かされていて、改めて社会科学を学ぶことの大切さを知りました。社会学類では他の分野を学ぶことも奨励していて、それにより社会科学の考え方が深まることも魅力の1つです。 みなさんも、自分の興味のある分野を幅広く学びながら、さらに自分が深く学びたい専攻を見つけて、多様な見方・考え方を身に着けることができる社会学類で学んでみませんか。長谷川 瑞穂(経済学主専攻)片岡 麗(社会学主専攻)飯野 結子(法学主専攻)

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