筑波大学入学案内 2023
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農林生物学コース  本田 悠理子 大学入学後、専門科目の授業を通して、作物の育種に興味を持ちました。農林生物学コースでは作物の育種技術についてはもちろん、育種を理解するうえで重要な作物の生理や生態など様々な分野を幅広く学ぶことができるため、このコースに進学しました。 私はトマトの収量増加を目標として、果実肥大について研究をしています。所属研究室ではある遺伝子が変異することにより、トマトの果実肥大が強化されると考えられている変異体を所有しています。しかし、その変異体の果実肥大がどの程度強化され、優れた育種材料として利用できるのかということについては不明でした。卒業研究では、変異体を栽培して収量や果実の表現型などを調査し、遺伝子の変異によってトマトの果実肥大がどの程度強化されるのか、その変異体が果実肥大を強化した品種開発のための新たな育種材料となり得るのかということについて評価を行いました。  生物資源学類には幅広い専門分野があり、それぞれの研究室で多種多様な研究が行われています。幅広い分野の知識を身に付けることができるだけではなく、より深く掘り下げて学ぶことも可能です。まずは幅広く様々な知識を身に付け、たくさんのことを学んでみてください。入学して間もない頃は漠然としていても、生物資源学類で多くのことを学ぶにしたがって、きっと興味や関心のある分野が見つかるはずです。そしてその興味や関心を突き詰め、学生生活を充実したものにしてほしいと思います。環境工学コース  山口 敦史 当初は遺伝子発現やタンパク質の研究がしたくて入学しました。生物の研究に活かせるように数学や物理も勉強しようと考えて授業を受ける中で,農林業や環境保全に関わる諸現象を数学や物理学を用いて科学的に理解し,実生活に応用する環境工学的なアプローチに魅力を感じるようになりました。 卒業研究では,コロイド粒子間に働く力について実験と理論モデルの研究をしました。土の中には粘土や土壌有機物などのコロイド粒子が無数に存在しています。化粧品などの身近な製品にも粘土や微小な金属酸化物などが添加されています。このコロイド粒子同士がくっつきあったり離れたりすることで,土や化粧品などの流れやすさや手触りが変化します。そのため,コロイド間に働く力を理解することは,環境中の物質移動や化粧品などの設計に役立ちます。 現在は,宇都宮大学で研究員として,土壌侵食の予測・抑制技術を向上させるべく研究しています。土壌侵食では,土粒子同士の結合が断ち切られることが重要な過程のひとつです。卒業研究でおこなったコロイド粒子間に働く力に関する基礎的な研究が現在の研究に生かされています。 将来の生物資源学類生には,視野を広く持って自分が興味を持てる内容をみつけ,大学での学びを楽しんで欲しいと思います。そのための多様な授業とコース,豊かな研究設備が学類には揃っています。皆さんが人と学問との良縁に恵まれ,有意義な学生生活を送ることを期待しています。応用生命化学コース  下段 千尋 元々は食に興味があり、食を通して社会に役立つ勉強や研究がしたいと思い、生物資源学類に入学しました。1・2年次に授業や実習を受ける中で、直接見ることの難しい細胞や分子のレベルで生命現象を理解したいと考え、応用生命化学コースを選びました。動物・植物・微生物などあらゆる生物に共通する普遍的な生命現象について学べるのが、このコースの楽しいところです。また知識だけでなく、それをどのように役立てるかという考え方も身に付けることができます。卒業研究では、微生物の細胞が持つ指紋のような特徴(自家蛍光シグネチャー)を解読する研究を行いました。所属研究室では、この特徴を細胞1個1個から取得して解析する技術を開発し、それらが細胞内部の状態を反映することを解明していました。私はこれを用いて、通常の顕微鏡では捉えることのできない微生物の「生」と「死」における細胞状態の違いを調べました。この研究は一見基礎的で、学類を選ぶきっかけとなった食とは関係がないように見えますが、例えば食品製造の現場で雑菌汚染を防ぐための除菌・消毒の有効性を評価する方法として、食に貢献できる可能性も秘めています。特定の分野を突き詰めることも楽しいですが、大学に入学したらまずはいろいろなことに挑戦してみてください。生物資源学類では、農学に関する非常に幅広い分野を学ぶことができます。全く関係がないと思っていた物事が思いがけないところで繋がっていたり、それまで考えもしなかったことに、夢中になることがあるかもしれません。社会経済学コース  松浦奈々帆 入学当初から農業経済・農業経営に関心があり、社会経済学コースを目指していました。1・2年生で、経済系の分野だけでなく、他分野も学ぶ過程で、食や農業が様々な分野に支えられていると実感しました。そのうえで、人や地域、産業の視点から農業を学びたいと再確認し、社会経済学コースへ進学しました。 私は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の影響による福島県産品の買い控えについて研究しています。人の認知資源に負荷をかけることで、福島県産を含む農水産物の選択に差が生じるかどうかを、消費者が対象の選択実験から明らかにすることを試みています。 全産業に言えることかもしれませんが、様々な人や組織、制度、学問によって農業が支えられていることをこの4年間で学びました。そして、農業の課題解決には、それらのつながりを考慮することが重要であると考えています。私は、今後農業関係の仕事に携わります。そこでは、農業の様々な課題に直面すると思いますが、目の前の出来事だけでなく、その背景にある多くのつながりを意識して解決策を考えられる人になりたいです。 生物資源学類では、1・2年生で様々な分野を学べます。様々な分野を学ぶことで、元々興味がある分野を改めて好きになるきっかけと、別の分野に進むきっかけの両方を得られると感じているので、自分が元々関心を持っている分野以外にもぜひ挑戦してみてほしいです。日々の講義の中に、今後を変える学びとの出会いが沢山あると思います。56

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